2007年09月28日発行1003号

【札幌市 無防備署名スタート 「この運動、待っていた」市民が続出】

 札幌で9月14日、北海道では初めてとなる無防備地域条例の直接請求署名がスタートした。開始から4日間で4350筆。法定数(約3万2千筆)突破までは8倍の署名数が必要だ。「反響は上々だが人手不足が決定的だ。一人でも多くの支援を」(無防備地域宣言をめざす札幌市民の会事務局)と呼びかけている。

 初日の14日正午、市役所前には市民や支援者約40人が集合し、出発式。午後の3時間、20数人が市内10か所の区役所のうち5つの区役所前で一斉に署名を始めた。1日目は532筆。短時間だが署名に応じる人の比率は上々だ。この様子は札幌テレビの夕方のニュースで放映され、翌日の北海道新聞には写真入りの4段記事が掲載された。

 15日は台風の影響で終日あいにくの雨。10区内の大型店舗前など各スポットで雨をしのぎながらの署名となった。人出は少なく692筆にとどまった。

 中央区の大手スーパー前では、請求代表者の大学教授・森啓さんや支援者が署名を呼びかけた。チラシの受け取りはよく、声をかける5人に1人が署名に応じる。「新聞、テレビで見た」「安倍さん(首相)は替わったが戦争に近づいていて不安」「若い人たちにも大切なこと。もっと宣伝しなさい」。生年月日の記載や押印に抵抗感はなく、老若男女問わず署名が寄せられる。市内には自衛隊施設が多いが、特に議論になるケースはなく、直接請求やジュネーブ条約の説明に「結果が楽しみですね」「面白い署名ですね」と積極的に受け止められている。

 一方、中央区にある市民の会の事務所には1時間に数本、問い合わせや署名用紙を求める電話・ファックスが入ってくる。「同じ思いの方はたくさんいる。どうしたらよいのか、いらだっている方がほとんどだと思う」と女性からのファックス。電話でも「家族だけでも書きたいから用紙を送ってほしい」。事務所は民家の一室を大家の協力を得て使用している。請求代表者の三尾谷信光さんは、電話の応対、受任者への連絡に追われる。「もう事務処理がたいへん。人手が足りません」。苦笑いで作業を続けた。

 15日夜、市内で無防備地域宣言・沖縄ネットワーク呼びかけ人の山内徳信参院議員を招き、市民の会主催の「沖縄と北海道を結ぶ無防備運動 9・15署名ガンバロウ大集会」が開催された。

人手不足が課題

 主催者を代表して森啓さんは「この時期に、『わが読谷村では村民の人権と財産を守るために全力でアメリカと交渉し解決している。自治体は具体的に外交をやっているのだ』と語る山内議員を迎えることができてうれしい。また全国から自腹を切って支援者がかけつけ指導してくださり勉強になる。札幌での成功は、道内の苫小牧、石狩、旭川へと広がる。中央対地方が現在の対立軸。国家と対決して人々の暮らしの現場である地方を拠点に平和なまちをつくるのがこの運動だ。条例化させ、世界から札幌はすごい町だといわれるよう、なんとしても成功させたい」とあいさつした。

 事務局からは2日間の署名活動が報告された。「『憲法9条が守られていないので、この署名は地域から守らせるものですね』など、期待は大きい。街頭に立ったら立った分署名は集まることが2日間で分かった。しかし、人手不足が決定的だ。現在の受任者は120人。受任者、集める人を何とか増やしたい」と訴えた。

 講演に立った山内議員は、読谷村長時代に直接アメリカと交渉し、住民の人権を守ろうとしてきた自治体外交の重要性を述べ、「外交・軍事は国の権限」として議論しない自治体当局の姿勢を批判。沖縄戦の体験から、「米軍が読谷村から上陸したのは読谷飛行場と嘉手納飛行場があったからで、本土攻撃の拠点にしたかったから。基地があればそこは危ない。軍は民衆を守らない。米軍が上陸したときも赤十字のマークを付けた車が走っていたが、それは攻撃してはいけないという意味だった。無防備の“無”は、“ない”ということではなく、無限の力がある、無抵抗の抵抗ということだ」。沖縄戦の歴史を改ざんし、新基地建設を進める政府を批判し、9月29日の県民大会の取り組みを紹介した後、「主人公はあくまでみなさん。札幌市が日本最初の条例制定都市になってもらいたい。子どもや青年に夢を与えますよ。政府は震え上がりますよ」とエールを送った。

 署名運動に取り組んだ市民(女性)は「大手スーパーの責任者に話したところ、1か月間店前でやってよいと言われ、好意的でとても驚いた。中央区では今日6人で160筆集めることができてよかった。これからもがんばります」と報告。会場から激励の拍手が起こった。

全道・全国から支援

 集会には、東京や京都など本州、道内の旭川市・函館市・苫小牧市・石狩市からも支援者が参加した。条例制定運動に取り組んだ東京・品川区と神奈川・藤沢市の市民からは会にカンパが寄せられ、会場カンパも約3万4千円が集まった。

 最後に会の共同代表・谷百合子さんは「真駒内の自衛隊はイラクに行く訓練を始め、国民保護法はどんどん進んでいる。こんな状況でいつまでも署名の準備だけやっているわけにいかないと、踏み切った。労働組合や団体にお願いに回っても、組織としてはとなかなか進まない。しかし、街頭に立てばどんどん応じてくれる。今後、平日は区役所前を、土日は商店街を中心に集めたい。署名集めは楽しくてクセになります」。元気に締めくくった。

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