2012年03月02日発行 1221号

【全原発停止まであと2基 とんでもない大飯再稼働】

 2月20日、関西電力の高浜原発3号機が定期検査に入った。残るはあと2基のみ。焦る政 府・電力会社は、大飯原発3、4号機を再稼働させようと躍起になっている。だが、運動と世論は再稼働を許さない。全原発停止は可能だ。

ワイロ受けた連中が審査

 経済産業省原子力安全・保安院は2月13日、関西電力が提出した大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働に必要だとするストレステスト(耐性検 査)について「妥当」の審査結果をとりまとめ、内閣府原子力安全委員会に報告した。

 専門家意見聴取会の井野博満(東大名誉教授)、後藤政志(元プラントメーカー技術者)両委員は、これに抗議する緊急声明を発表した。その要点は、(1) 福島事故は収束しておらず原因もわからない状態にある(2)制御棒の挿入性を検討の対象から外したり、原子炉建屋などの構造強度に甘い許容値を適用するな どの技術的問題がある(3)過酷事故対策の検証を含めた2次評価と合わせて評価しなければ安全性を判断できないが、関西電力は2011年末をめどに提出す べき2次評価結果をいまだに提出していない(4)現時点で「妥当」としたことは、はじめに再稼働ありきの見切り発車と言わざるを得ない、というものだ。

 保安院からの報告を受けて、原子力安全委員会の班目(まだらめ)委員長は「3月いっぱいに結論をまとめたい」と語った。班目は国会事故調査委員会で、福 島の事故に関して「安全委員会の指針類にいろんな瑕疵があったことは認めざるを得ない。津波に対し十分な記載がなかったことや、長時間の全交流電源喪失を 考えなくていいと書くなど明らかな誤りがあった」と認め謝罪した。にもかかわらず露骨に再稼働へゴーサインを出そうとしている。班目は、過去に三菱重工か ら寄付を受けており(1/1朝日)、御用学者の典型だ。

 専門家といわれる研究者にも関連企業からワイロをもらっている連中がいる。保安院は2月9日、原発関連の審議会や意見聴取会に所属する専門委員256人 のうち、24人が審査対象の事業者とつながりがあり、うち12人は事業者から報酬や謝礼を受けていたと認めた。原発メーカーからワイロを受け取り、福島事 故を引き起こした共犯者たちによる「最初から結論の決まった審査」など誰が信用するものか。

「収束」からほど遠い現実

 しかも、野田政権が昨年末に宣言した「冷温停止状態」に赤信号がともる事態も生じた。福島第1原発2号機の原子炉圧力容器の温度計の1つが1月末から上 昇を続けていたが、2月12日には東京電力の保安規定で定めた80度を超えた。13日の点検作業後には一時的に記録上限の400度を超えて振り切れ、その 後275度まで下がるなど激しく変動した。東電は「温度計の故障」と発表したが、崩れ落ちた燃料棒が炉心の中でどういう状態にあるかは全くわからない。今 でも「崩壊熱」を出し続けているはずであり、冷却水が行き渡らなくなれば高熱を発する危険性がある。フクシマの現実は「収束」などはるかに遠い話だ。 

地元自治体も慎重姿勢

 大飯原発の再稼働に向けては地元自治体の同意が必要だ。政府は、2月24日に開会する福井県議会と3月1日に開会するおおい町議会で同意を得ることを 狙っている。だが、原発が集中する福井県内の状況は、安易な再稼働を許すほど甘くはない。

 2月6日に開かれた、福井県内9市議会の議長・副議長でつくる市議会議長会の定期総会では、敦賀市提出の原発再稼働を国に要望していく決議が否決され た。

 敦賀市の副議長が「市民は生活のほとんどの部分を原発に依存している。このままでは将来への不安がある」と理解を求めた。だが、他市からは「原発の安全 は何も確認されていない」(小浜市議長)「自分勝手もはなはだだしい。県民感情から理解できない」(鯖江市副議長)「時期尚早」(勝山市副議長)「安全が 確認できると証明してほしい」(越前市議長)と反対論が続出、異例の否決となった。

 国からの電源3法交付金や関電からの多額の寄付金で潤ってきたのは立地自治体だが、もし事故が起これば被害は周辺自治体にも及ぶ。立地自治体が同意さえ すれば再稼働できる仕組み自体が福島事故の教訓から外れている。

 西川福井県知事は「ストレステストだけでは不十分」とし、原発の老朽化や地震の揺れが福島の事故にどう影響したかを踏まえて政府が暫定的な安全基準を明 らかにすることを求めており、おおい町長も歩調を合わせている。それほど住民の不安が強いからだ。推進派の策動は成功していない。

 再稼働を狙う政府・原子力安全委・関電に抗議の声を集中し、立地自治体に同意を拒否するよう迫ろう。全原発停止まであと2基だ。


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