2016年08月19・26日発行 1441号

【みるよむ(408) 2016年7月30日配信 イラク平和テレビ局in Japan イラクをIMF(国際通貨基金)に売り飛ばすな】

 2016年6月、サナテレビは、イラク政府がIMF(国際通貨基金)から150億ドル(約1兆5千億円)もの借金をすることについて、バグダッド市民にインタビューした。政府とグローバル資本が押しつける新たな負担に市民の怒りがたかまっている。

 市民は「イラク政府がなぜIMFから借金をするのか全く理解できない」と言う。石油価格が下落しているとはいっても増産につぐ増産で売り上げは1千億ドル(約10兆円)もある。「石油販売の収入はどこに行ったのでしょうか」と問うのは当然だ。

 巨額の借金をすれば、返済しなければならない。IMFは、融資する相手国への条件として公共サービスや福祉の切り捨て、緊縮政策を迫る。市民は「政府がイラクを破壊し、国も、土地も、みな売り払った」と非難の声を上げる。

 アバディ政権の経済運営は全くでたらめだ。市民は「イラク中央銀行と貿易銀行は、何千もの事業のためと口座を開いたが、実際は全部にせ物の事業だった」と実態を告発する。

 「国家機関と政党の中にはびこる腐敗が財政赤字を生み出し、(その張本人の)彼らがイラク市民の負債となる金を受け取りにIMFのところに行った」という構図になっている。市民が「汚職がイラクの体を食いつぶしている」と言うとおりだ。

 7月初め、バグダッドで占領以後最大の自爆攻撃があり、300人以上の命が奪われた。市民の怒りは、犯行声明を出したIS(「イスラム国」)はもちろん、汚職にまみれたアバディ政権にも向けられている。

 イラク政府は2010年、英国人の詐欺師から数十億円をかけてにせ物の爆弾検知器(装置の頭部が動くだけで何の検知機能もない)を購入していたが、何と2016年の現在も使用していたことが発覚した。このように本来市民を守るための政府資金が政治家のポケットの中に消えていく。

 政府の経済運営失敗と汚職による赤字のつけを民衆に押し付けるのがIMFからの借款である。そのIMFの実権を握るのはアメリカや日本などのグローバル資本主義の国々だ。イラク経済を食い物にするアバディ政権とグローバル資本に対し、イラク市民とともに抗議の声を上げよう。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



 
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