2016年08月19・26日発行 1441号

【辺野古・高江阻止へ 法さえ無視した暴挙を許すな 「地方自治は死ぬ」 翁長知事が意見陳述】

国が県に宣戦布告

 7月参院選直後、沖縄県北部の東村と国頭(くにがみ)村に広がる米軍北部訓練場の高江ヘリパッド建設が不意打ちで工事再開されたのを皮切りに、安倍政権はかつてないほどの強権むき出しで沖縄に襲いかかっている。

 その姿勢を公然と示したのが7月14日の辺野古代執行訴訟の和解に基づく「作業部会」だ。県側が和解条項に示された「円満解決を目指した協議」による解決を求めたのに対し、政府は協議継続を口にしつつも(1)22日に不作為の違法確認訴訟で県を提訴(2)辺野古キャンプ・シュワブの陸上工事再開(3)高江ヘリパッド工事再開、と県に宣戦布告した。

不当な提訴、訴訟指揮

 またも県は国に訴えられ、8月5日福岡高裁那覇支部で辺野古・不作為違法確認訴訟の第1回口頭弁論が行われた。

 内容は辺野古新基地埋め立て承認取り消し処分の取り消しを求める国土交通大臣の是正指示に従わない翁長雄志(おながたけし)知事は「不作為」として違法確認を求めたもの。国の言う「不作為」とは6月国地方係争処理委員会の結論が出た後、県側は訴えることができたのに「何もしていない」という点を指す。だが、そもそも代執行裁判や係争委で示された「解決に向けた協議」に背を向ける国の姿勢こそ問われるべきだ。国側は最高裁勝訴でお墨付き≠得て、すぐに工事を強行したいというのが本音だ。

 裁判に先立ち、裁判所前で行われたオール沖縄会議による激励集会では、国の横暴への怒りに燃える約1500人の市民が翁長知事を出迎え思いを一つにした。知事は「私たちには民意がある、民意を背に頑張る」と力強く決意を語る。参加した市民は「オナガコール」の激励で知事に思いを託した。

 意見陳述で翁長知事は言葉の端々に怒りをこめ、「自国の政府にここまで虐げられる地域が沖縄県以外にあるのか」「47都道府県の一つにすぎない沖縄県を政府が総力を挙げてねじ伏せようとしている」「すべてが国の意向で決められるようになれば地方自治は死に、日本の未来にぬぐいがたい禍根を残す」と痛烈に政府を批判した。

 県側は翁長知事以外にも8人の証人を申請し慎重審理を求めたが却下された。今回の裁判では国・裁判所に不信感を抱く場面が多かった。国側が即日結審を求めたことに、翁長知事は「きわめて不誠実な対応」と批判。さらには、多見谷寿郎裁判長から県側に対し「判決には従うか」と出た質問に対し、県側代理人は「非常に政治的で挑発的な質問」と拒み、会見でも「裁判官の権限を逸脱し、異様」と厳しく批判した。次回19日の弁論で結審し、判決は9月16日というスピード訴訟指揮についても不満と疑念が溢れた。

 翁長知事は、国が裁判で法治国家を強調したことに触れ、「国家権力が一地域を相手に大人げない対応していることが多い。法治国家というより放置国家だ」と批判した。

高江・工事強行再開

 国が県を提訴した7月22日、東村高江の県道70号線沿いにある米軍北部訓練場ヘリパッド建設道路に通ずるN1地区ゲート前で、全国から動員された約500人の機動隊が抗議する市民を強制排除。沖縄防衛局は工事を強行した。さらに沖縄県警は事前通知もなくN1地区の前後を挟むように県道70号線を10時間超封鎖。住民はじめ報道関係者や道路管理者の県職員、基地従業員までも締め出し、H・G・N1地区とゲートを通じて資機材を搬入した。

 県内外から多くの人が訪れ、反対運動の拠点だったテントも撤去され、座り込みを続けてきた住民に悔しさがにじむ。国家権力が総力を挙げて非暴力の市民に襲いかかる姿は、まさに戒厳令≠セ。安倍政権が狙う憲法停止の緊急事態条項を先取りするものに他ならない。

 これらの横暴(ゲート前の市民テント撤去、道路封鎖と検問、ゲート前の金網設置、事前協議なしの立木伐採等)については、弁護士や専門家が違法性を指摘している。法的根拠なく工事や撤去が強行された事実が次々と明らかになり、防衛局等は対応を迫られている。ヘリパッド建設のために法も条例も無視する断じて許されない行為だ。

 通称「N1裏」と呼ばれるN1地区に続く裏側の出入口の市民テントを住民たちは「最後の砦」と呼ぶ。沖縄防衛局がこの市民テントの撤去期限とした8月5日の夕方には、テント前で大規模な抗議集会が行われ1000人以上が結集。ZENKO代表も緊急に駆けつけた。7日朝の時点で撤去の動きはないが、8日に向けても多くの市民が泊まりこみ、最大限警戒し突破はさせないとの誓いを胸にしている。 (A)

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