2016年08月19・26日発行 1441号

【韓国参加者を囲む集い ともに生きる希望連帯労働組合 労働運動は地域に入ってこそ】

 7月29日、2016ZENKOのプレ企画「韓国参加者を囲む集い」では、韓国の新たな労働運動として注目される「ともに生きる♀望連帯労働組合」が講演した。

非正規賃上げで組合拡大

 希望連帯労組は、ケーブル放送会社C&Mの労働者20人で結成された。2010年1月、C&M社は、営業、修理補修、受信機設置等の業務の外注化・リストラを発表した。C&M支部はそれに対し、35日間のストライキを行った。

 そのなかで、正規労働者は譲歩してでも非正規労働者の賃上げと権利の獲得を目指す、と方針を立てた。その闘いは実際に非正規の賃上げを実現し、以降非正規労働者や同業他社からの加入が相次ぎ、現在3200人の組合となっている。

 韓国では2012年から15年の間で、正規雇用者の平均賃金は4・3%上がったが、非正規雇用者の場合は0・5%しか上がっていない。両者の格差は広がっている。

 希望連帯労組は、自分たちの賃金引き上げしか興味ない従来の正社員労組の姿勢が、労働運動と地域社会との乖離(かいり)を生み出したと批判する。来日したパク・ジェボムさんは「賃上げの成果を子どもの塾費用にあてるような労働運動では、資本主義社会に隷従するだけで、市民からの理解も得られない」と語った。

社会連帯事業

 続いて、「地域社会と結びつかない労働運動には限界がある」「労働者もまた地域の住民の一人であり、生活や文化での地域の連帯が必要だ」として、希望連帯労組が行っている社会連帯事業について報告した。

 団体交渉での賃上げの成果から毎年約3億ウォン(3000万円)の基金を創出している。労働者は賃上げの一部を譲歩し、使用者は利益の一部を譲歩することで、この事業について労使が合意して、費用を捻出している。企業にとっても地域貢献は重要であるからだ。

 こうして確保した基金を、どこかの団体に寄付をしてお仕舞いではなく、自分たちの手で連帯事業を行っているところが特筆すべきだ。

 事業の例として、(1)学童保育、(2)家修理、(3)エコ菜園、果物分かち合い、(4)「多くの階層が出会う場」としての障がい者と労働者家族の交流等を挙げた。。さらには、未就学児の多いネパールに学校を建設したという。

 組合員のすべてがこの連帯事業に積極的だというわけではない。しかし、一度参加すれば、最初はいぶかしがっていた組合員も意識の変化が見られるという。

 他の労組も希望連帯労組の活動に注目し、社会連帯活動を行うところが出てきている。

バッシング克服する運動

 保守勢力やマスコミが扇動する労働組合バッシングは日韓共通だ。だが、それを払拭しようとする活動を韓国の労働運動は始めている。

 「思想的な源流があれば何か、海外の運動から何かヒントを得たのか」と会場から質問が出たが、「近年の国内の労働運動の反省から生まれた自前のもの」という。

 希望連帯労組は昨年の団結まつり(関西)に引き続いて来日した。労働運動、平和運動、様々な運動が一緒になった全交の運動に関心を持ったという。韓国のこの新たな取り組みから学ぶところは大きい。

 
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