2016年08月19・26日発行 1441号

【丸ごと民間委託を許すな―ZENKO討議/人権尊重の地域・自治体を】

 7月31日、2016ZENKOin大阪・第8分野別討議では「自治体丸ごと民間委託を許さず、人権尊重の地域を!」の論議が行われた。70兆円の市場を求め、自治体業務の丸ごと民間委託が全国に広がっている。各地の実態報告を踏まえ、阻止に向けた方針が共有された。

利益優先「サービス」

 業務の丸ごと民間委託では、本来非営利である公共サービスが利益優先の経済活動となる。参入企業の利益は株主配当や内部留保に回され、住民にとって利益がもたらされることはない。安倍政権は、今年から、地方交付税の算定基準に民間委託の進展状況を加味し、先行する自治体に優先配分することを始めた。政府が半強制的に丸ごと民間委託を進めている。

 公立保育所の民間委託や公的施設への指定管理者制度導入によって、30年間で保育士や技能労務系職員など2500人を削減してきた東京・足立区。2014年度からは戸籍等住民窓口を民間委託。今年から国民健康保険業務も完全委託を開始した。

 足立区職労深澤健一書記長は「戸籍事務では、法務局や労働局から指摘を受け、区は5回改善報告を出し一部事務が直営に戻された。視察に来た自治体でもリスクがある≠ニする市町村が多くなっている。戸籍など他部署と連携が欠かせないのに、仕事がぶつ切りにされ連携が取れなくなっている」と実態を指摘。「地域住民主体の共闘会議が結成され闘っている」と報告した。

 土屋のりこ足立区議は「経費削減にもならず、逆に支出が1千万円増えていると区議会で追及した。人件費切り下げのために非正規雇用に頼っている。窓口の区民サービスも低下している」と問題点を明らかにし、「公的責任放棄に区民が声を上げれば阻止できる」と呼びかけた。

権利の切り捨て

 大阪維新市政の下で民間委託を拡大する大阪市の状況を市職員の辻野聰一さんが報告。「正規職員が減り災害対応ができない不安が高まっている。市政方針から経費削減との表記がなくなり、『民間委託で経費削減』と言えなくなっている」と明らかにした。

 東京・練馬区の保育園民営化では、保育所に混乱が生じ、保護者から民間委託無効確認訴訟が提訴されていることが示された。

 討議を通じて、自治体業務の丸ごと民営化は、公的責任の放棄と住民の権利の切り捨てであり、低賃金労働の拡大であることを確認。具体的行動として、中央省庁交渉や署名運動など自治体労働者、議員、市民一体となって取り組む方針を決めた。

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