2016年11月18日発行 1453号

【戦争と抑圧のない社会へ 民衆を殺りくし難民急増させる モスル無差別攻撃をやめろ】

 イラク政府軍と米軍など10月17日、IS(「イスラム国」)の支配するイラク第2の都市、モスルの奪還作戦を開始した。11月3日にはイラク軍が約2年ぶりにモスル市内に入ったと伝えられている。

 大手メディアはこの「対テロ戦争」は「モスルを解放するため」と宣伝するが、全くの偽りだ。

 米軍やNATO(北大西洋条約機構)諸国、イラク軍、ロシア軍は、ISの支配地域に無差別爆撃を続けてきた。米軍と「有志」連合軍は10月後半、モスル周辺のムハム・エル・エリル市、バズヴァヤ、ゴギエリの学校を含む居住区を空爆した。シリアでは、過去1年間にロシア軍の空爆で9千人以上が死亡、うち民間人は3千人を超える(IS戦闘員とされる死者は2800人)。米仏軍の空爆でも600人の民間人が殺害されている。市民の命など、一切かえりみられていない。


育成されたテロ組織

 もともとISは、欧米、湾岸産油国などのグローバル資本がシリアのアサド政権を打倒するために育成してきたテロ組織だ。米国CIAや英国MI6といった情報機関が戦闘員の訓練や資金援助をしてきた。

 最近、ウィキリークスは次のような事実を暴露した。

 2009年12月、当時の米国務長官ヒラリー・クリントン名で送られた国務省電報は「サウジアラビアはアル・カイダとタリバンなどに対する決定的な財政的支援基地であり続けている」と明記。このアル・カイダを割って出たのがISだ。

 2014年8月17日付のISに関する米国務省メモには「ISや他の中東における過激グループに秘密裏に資金や兵站(たん)の支援を提供しているカタールとサウジアラビアの政府」と書かれている。

 オバマ政権は、サウジアラビアなどがISを支援していたことを知りながら容認したのだ。

利権獲得争いの攻撃

 モスルが「解放」されたとしても市民の苦難は続く。人口210万人のモスル市ではすでに90万人が脱出した。100万人が新たに難民になると推計される。

 モスルを攻撃しているのは、「有志」連合軍とイラク軍に加え、クルド民族主義勢力の部隊「ペシュメルガ」、シーア派の私兵でイランの訓練を受けている「民衆動員運動」だ。さらにトルコ軍がモスルの隣の町に数か月前から派兵されている。トルコのエルドアン大統領はISを追い出した後も駐留を続けると主張する。300万人いるイラクのトルコ系住民はシーア派であり、スンニ派が中心のトルコは宗派対立も持ち込むことになる。

 モスルの争奪戦とは、「対テロ戦争」を口実としたグローバル資本各国・勢力の利権獲得争いである。したがって、ISを根絶する道は、「モスルの大衆の側が自らの独立した隊列を組織しISやイラク国内外のテロ勢力と闘うこと」(イラク労働者共産党アデル・アハメド)以外にない。

 世界の反戦運動は、ISの暴力支配とグローバル資本による無差別攻撃に反対し、イラクの市民・労働者と連帯しなければならない。

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