2016年11月18日発行 1453号

【未来への責任(212)戦没者遺族の声 国会に届く】

 10月13日に参議院議員会館で開かれた沖縄遺骨収集団体ガマフヤー(ガマを掘る人)主催の「戦没者遺骨返還のあり方を考える国会内集会」は大成功した。日本遺族会会長(水落敏栄・自民党参議院議員)の文書アピールで始まった集会には、超党派で10人の国会議員があいさつ。参加国会議員は代理人を含め30人になった。

 沖縄選出議員はほぼ勢ぞろい。厚労省は、DNA鑑定キットを沖縄戦戦没者遺族264家族416人の希望に応えて9月に送ったことを報告した。

 ニューギニアで遺骨収集を行う太平洋戦史館、シベリア抑留者支援・記録センターなどの遺骨収集団体も参加した。集会は政治的にも大きな集まりとなったが、一番大きな成果は、戦没者遺族からの発言が国会議員の心に届いたことだ。

 DNA鑑定で父の遺骨が戻って来た田畑さん(東京都町田市)は「今年1月に母が101歳で亡くなった。父の遺骨の横に母の遺骨をぴったりとつけている。何とか長男としての務めを果たせた」と感極まった。私たちが韓国の遺族から聞く、「遺骨の一片でも持ち帰らねば子としての道理が果たせない。死ぬこともできない」という言葉が重なった。具志堅隆松代表は「第2第3の田畑さんをつくっていきましょう」と参加者に強く訴えた。

 沖縄戦遺族で千歳市遺族会会長渡邉さんからは「父母のお墓に兄を入れたいという一心で、具志堅代表と毎年発掘をしている。兄の戦死記録は、今回対象の幸地(こうち)のすぐ隣の石嶺。部隊は同地域一帯で戦闘しているのに石嶺は対象に入っていない。鑑定に参加させてほしい」旨を発言。厚労省の事業実施における問題点が浮き彫りになった。私たちはすべての希望する遺族と遺骨の鑑定照合を求めている。

 Yさんは、祖父が祖母と結婚する前に出兵していて戸籍上つながっていないため鑑定に参加できない母の実情を訴えた。その場で、具志堅代表は厚労省と直接やり取り。厚労省は、戸籍上のつながりがなくても戸籍上の対象親族を通じて申し入れがあれば鑑定可能であると答えた(鑑定は1家族で原則2名が参加できるようになっている)。会場からは一斉に拍手が沸いた。

 韓国の戦没者に関しては、白眞勲議員が参議院予算委員会で2日前に追及したこと、太平洋戦史館の岩渕宣輝代表からニューギニアで韓国の方と一緒に発掘作業をしたことが発言された。最後に、川田龍平議員が「遺族の方が高齢で、遺族DNA採取を優先してやらなければ取り返しがつかない、今までは荼毘(だび)に付すことが亡くなった方のためと思ってやってきたが、ちゃんと遺族に返すところまで国としての方針を変えさせていく」と決意表明した。締めくくりは具志堅代表。「戦争で亡くなった人たちを家族の元へ返す、そのことによって私たちが戦争のない未来を目指すことができるように。この願いを込めて集会を終わりたい」。参加した国会議員・秘書からも「ぐっと来た、いい集会だった」との声があがった。

(「戦没者遺骨を家族の元へ」連絡会 上田慶司)

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