2017年03月03日 1467号

【南スーダンPKO日報の隠蔽 ウソで固めて戦争法新任務 「駆けつけ警護」を強行】

 南スーダンPKO(国連平和維持活動) 「日報」開示問題をきっかけに稲田朋美防衛大臣辞任要求が広がりを見せている。迷走、居直り答弁など大臣資質に欠けるのは言うまでもないが、不都合な情報を隠し、都合よく改竄(★かいざん)してまで戦争国家への道を突き進もうとする安倍政権の横暴さが怒りを生んだ。稲田防衛相を即刻辞任に追い込み、自衛隊即時撤退とともに安倍退陣につなげよう。

戦闘伝える現地日報

 「13時10分/宿営地5、6時方向で激しい銃撃戦」「13時15分/宿営地南方向距離200(b)トルコビル付近に砲弾落下」。南スーダンPKOに派遣されている陸上自衛隊施設部隊が作成した日報(2016年7月11日付)の一部だ。現地では、利権をめぐりキール大統領派とマシャール前副大統領派間の戦闘が続き、300人近い人びとが殺されている。

 宿営地周辺での銃撃戦発生の事態に「流れ弾への巻き込まれ、市内での突発的な戦闘への巻き込まれに注意が必要」と記述。臨戦態勢にあるのがわかる。日報は「予想シナリオと我(施設部隊)に及ぼす影響」の項目で、関係悪化モデルに「ジュバでの衝突激化に伴うUN(国連)活動の停止」などを想定していた。現地部隊は、任務(施設整備)ができる状況にないとの認識を示している。

 施設部隊が作成した日報は、防衛大臣直轄組織である陸自中央即応集団司令部に送信され、報道情報などを補い翌日付けの「モーニングレポート」が作成される。7月12日のレポートは「戦車や迫撃砲を使用した激しい戦闘がUNハウス(国連司令部が所在)・UNトンピン(日本隊宿営地が所在)周辺で確認される等、緊張は継続」と記された。

 自衛隊が南スーダン情勢をどのように把握していたのかがよくわかる。現場の部隊だけでなく、大臣直属の組織が「戦闘」と表記していることは、極めて重い事実だ。

 この日報の開示請求をフリージャーナリストが行ったのが16年9月30日。ところが2か月経った12月2日、防衛省側は「廃棄した」と通告。それから2か月。17年2月7日、一部黒塗りで公表された。開示請求から4か月経過してからだ。「廃棄」とされた日報は、派遣当初の12年1月16日以降すべてが統合幕僚監部に保存されていた。

「隠蔽(いんぺい)の必要はない」?

 防衛省の対応は余りに怪しい。稲田防衛大臣は「隠蔽する気も、必要もない」と野党の追及に色をなして反論する。だが、本当に隠蔽するつもりはなかったのか。稲田は、日報開示は再調査を指示した自分の手柄のように言う。だが、そうではない。経過を追えば、姑息なつじつま合わせに腐心したことがよくわかる。

 開示請求が出された9月末はどんな時か。11月20日に南スーダンに向け出発する第11次要員に「駆けつけ警護」任務を付与する閣議決定のタイミングを図っているころだ。戦争法施行後すぐの第10次要員(5月)への任務付与を見送った安倍政権。さらに半年先送りにはしたくない。10月8日、稲田は現地視察し「平穏は保たれている」とウソを言い、11月15日「駆けつけ警護」閣議決定。第11次要員に指揮権が引き継がれる12月12日から運用開始へと持ち込んだ。

 稲田の再調査指示(12/16)はその後ようやくなされ、発見(12/26)、開示(2/7)に至る形にしたのだ。

 現場部隊から毎日「戦闘」の報告が上がる状況が明らかになっては、とても閣議決定できない。防衛省には、隠蔽する気も必要も多いにあった。「誰がいつ削除したのか不明」としながら調査委員会の設置を保留し、「廃棄は開示請求の前」と言い切る稲田の破廉恥さがそれを証明する。

自衛隊は撤退しかない

 政府や防衛省がどれほど隠そうとしても、南スーダンの状況は戦闘が続き、多くの市民が国内外に避難している事実は変わらない。

 国連難民高等弁務官事務所は2月10日、国外難民は150万人を超えたと発表した。その6割以上が子どもで、多くは重度の栄養失調にあるという。国内難民は210万人以上。人口の3割が家を追われたことになる。

 こうした事態に国連安保理は同日、続発する戦闘について強く非難し、すべての当事者に即時停戦を求める声明を発した。市民への攻撃は戦争犯罪に当たると警告している。特に南スーダン政府には攻撃の詳細と責任の所在を明らかにするよう要請した。現地は戦闘状態そのもの、懸念される民族浄化。大統領派はその責任を免れない。

 政府軍の副参謀長が「政府軍は民兵集団になり下がった」と批判し、2月11日辞任した。安倍政権が肩を持つキール大統領の兵が村の焼き打ちやレイプなど他民族への虐殺を繰り返し、民族浄化を行っていると非難しているのだ。

 稲田は「現地で何が起こっているのかが重要。法的意味での戦闘は起こっていない」と強弁し、議論が撤退に及ぶのを避ける。「国家または準国家間の戦闘」以外は法的戦闘ではないという稲田流解釈に従えば、内戦に戦闘はなく、自衛隊の軍事介入が可能となる。現地では血みどろの利権争いで多くの市民が犠牲になっている。自衛隊員はこの腐敗した大統領派民兵とともに住民に銃を向ける事態に追い込まれることになる。

 「憲法に抵触しないよう戦闘とは言わない」「PKO5原則に反しないよう戦闘とは言わない」とまで平然と口にする稲田。憲法違反状態を認めながら開き直る安倍政権の戦争国家づくりはますます乱暴になってきた。

 野党4党は2月15日、「隠蔽体質の稲田辞任」を求めることで一致した。国会前では、連日「稲田やめろ」のコールが響いている。全国各地から即刻辞任、自衛隊即時撤退の声をあげよう。

 
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS