2017年03月17日 1469号

【安倍・経団連・連合が策動 過労死水準の残業合法化 月45時間、年360時間は譲れない】

「働き方改革」政府案

 安倍首相は2月14日、第7回働き方改革実現会議を開催し、時間外労働時間の上限規制に関する政府案を示した。

 その概要は、労働基準法36条に基づく労使協定(36<サブロク>協定)で週40時間を超える時間外労働の限度を「月45時間かつ年360時間」と法律に定め、罰則を設ける。ただし別の労使協定を結べば「年間最大720時間(月平均60時間)まで上限を引き上げられる」。繁忙期の1か月単位、2か月単位等の上限については「年間720時間を超えないことを前提に別途設ける」とするものだ。

 当初の案では、月100時間まで認めるとしていたが、労使の調整がつかず今回は明示せず。これに関して、安倍は「胸襟を開いての責任ある議論を労使双方にお願いしたい。合意を形成しなければ残念ながら法案は出せない」と恫喝も交えて連合と経団連の談合を促した。トップ会談が行われ、経団連の「上限月100時間」に連合が近く妥協と報じられている。

 また、建設業や運送業、企業の研究開発部門などは「36協定」による残業時間上限の適用除外だが、政府案では今後の検討課題とされた。終業から次の勤務までの休息時間(勤務間インターバル)も法規制しないことを表明した。

月45時間超は危険

 厚生労働省が2001年に出した通達「脳・心臓疾患の認定基準」は「過労死認定基準」といわれ、内容は次のとおりだ。(1)発症前1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は業務と発症との関連性が弱いが、45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できる(2)発症前1か月間におおむね100時間または発症前2〜6か月間にわたって1か月80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる。

 安倍首相は衆院予算委員会で「100時間、80時間が過労死認定基準であり、45時間の限度基準を指摘するのは誤り」と、100時間、80時間まで認めることが正当であるかのように答弁した。過労死認定基準(2)は、月100時間、80時間の時間外労働をしていれば明らかに業務に起因するとする。しかし、重要なのは、(1)の45時間を超えて長くなるほど業務と発症との関連性が強まる点だ。

 昨年厚生労働省が初めて作成した「過労死等防止対策白書」を見ると、14、15年には1か月の時間外労働が45時間以上60時間未満であっても1人が過労死認定され、60時間以上80時間未満では14人が認定されている。時間外労働が45時間を超えるのが危険なことは労災認定結果からも証明されている。

過労死放置の安倍

 働き方改革実現会議では、年間720時間でほぼ合意形成がされていると言われる。とんでもないことだ。月平均60時間でも確実に過労死ゾーンに入る。「別の労使協定」など論外だ。

 安倍に過労死問題を解決する意思がないことは、建設業、運送業、研究開発部門などで残業時間の上限適用除外が放置されていることで明確だ。

 15年度の脳・心臓疾患の労災認定請求数第1位は運送業で181件(内認定96件)、2位は建設業111件(内認定28件)。15年度に厚生労働省が支給決定した脳・心臓疾患による労災件数計251件の約3割79件がトラック運転者だ。賃金が低く労働時間が長い運送業の時間外労働時間の規制は緊急課題だ。

 さらに、政府案の規制論議に休日労働は含まれていない。労基法36条の時間外労働限度に法定休日(週1回か4週4回)の労働時間が含まれない問題も解決すべきだ。1か月の時間外労働を45時間にしても、月4回日曜日に働いた場合その分は時間外労働にカウントされない。毎日曜日12時間ずつ働けば、45時間+48時間=93時間で過労死ゾーンに入ってしまう。政府は100時間、80時間と口にするが、実際は150時間、130時間となることも十分承知の上という悪質さなのだ。

 まず、月45時間、年360時間の労働省告示第154号を無条件に遵守させなければならない。これだけで、過労死は大幅に減少する。

EU指令の水準へ

 EU(欧州連合)では、労働者の安全、衛生、健康の保護をうたうEC(欧州共同体、EUの原型)条約第137条に基づく労働時間指令がある。

 主な内容は、(1)24時間につき最低連続11時間の休息期間を与える(1日の労働時間の上限は原則として13時間)(2)6時間を超える労働につき休憩時間を設ける(3)7日ごとに最低連続24時間の休息期間+上記の11時間(連続35時間)の休息期間を与える(4)労働時間は7日につき時間外労働を含め平均して48時間を超えない(5)最低4週間の年次有給休暇を付与する―である。

 少なくとも月45時間年360時間を上限にして、ようやくEU水準に近づくことが可能になる。安倍・経団連・連合なれあいでの過労死水準容認を許してはならない。

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