2017年03月17日 1469号

【国際自動車賃金訴訟で最高裁判決 労基法37条を力に「残業代ゼロ」打ち破ろう 闘いの舞台は再び高裁へ】

 タクシー業界大手、国際自動車の労働者が、「残業代ゼロ」の賃金規則は違法、と訴えていた裁判の上告審で最高裁は2月28日、原判決の会社側敗訴部分を破棄し、審理を東京高裁に差し戻す判決を言い渡した。

 歩合給から残業代と同じ額を差し引く同社の賃金規則について判決は、「当然に労働基準法37条(時間外・休日・深夜の割増賃金)の趣旨に反し、公序良俗違反で無効となるわけではない」とし、東京地裁・高裁が正当にも「これでは残業をしてもしなくても支払われる賃金は全く同じになる。民法90条(公序良俗)違反で無効」と結論づけた判断を覆した。なぜ公序良俗違反とならないのかの理由も明らかにしていない。

 判決はその上で、同賃金規則について「通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別できるか否か」「割増賃金として支払われた額が労基法37条等に定められた方法で算定した割増賃金の額を下回らないか否か」を審理しなおすため、事件を原審に差し戻す、としている。

 最高裁が原判決を否定しつつも自ら労働者側の請求を棄却する判決を出せなかった背景には、電通やヤマト運輸に見られるような過労死を生む異常な長時間労働に対する高まる社会的批判がある。闘いの場は再び東京高裁に移る。給料明細には時間外手当の記載があるといった単なる形式的判断によって、また「歩合給の算出方法をどう定めるかは当事者の自由」といった労基法の強行法規性を無視した理屈によって、残業代不払いを容認することがないよう、高裁を包囲する闘いを強めなければならない。

 判決後の記者会見で、原告の一人、全国際自動車労働組合(国際全労)委員長の伊藤博さんは「賃金未払いというのは恥ずかしいこと。高裁の勝訴がそのまま生きるだろうと考えていた。高裁の判断がこの先変わるのはどうしても許せない。これからもひるまず勝訴判決が出るまで闘い続ける」と決意を語った。

 原告団・弁護団と国際全労、国際全労が加盟する首都圏なかまユニオンは3月2日、「労基法37条を武器として労働者の権利擁護をはかり、『残業代ゼロ』の賃金規則を許さないために闘いぬくことを宣言する」との声明を発表した。

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