2017年04月21日 1474号

【米トランプ政権のシリア武力攻撃糾弾 侵略支持の安倍も同罪】

国際法違反の攻撃

 米トランプ政権は4月7日早朝(現地時間)、シリアのシャイラット空軍基地を標的に地中海の米艦船から巡航ミサイル「トマホーク」59発を撃ち込んだ。国際法違反の侵略行為であり、断固糾弾する。

 トランプは「独裁者バーシャル・アサド(シリア大統領)が罪のない市民に化学兵器攻撃を行った」と断定、「化学兵器の拡散と使用を防止するため」と攻撃を正当化した。化学兵器爆弾を搭載した戦闘機が飛び立った基地を破壊したと言うのだ。

 しかし、その根拠は一切示されていない。化学兵器による被害は、4月4日シリア北西部イドリブ県で発生した。「早朝6時ごろ」との現地証言はシリア空軍の「爆撃時間は11時」とは食い違う。他にも不明な点は多々ある。国連安保理が5日に緊急招集され、調査に向けた協議が開始された。米軍の軍事行動がそれを中断させた。いかに唐突であり、独善的かは明らかだ。爆撃を正当化できる根拠は何一つない。

 仮に、トランプの言い分を認めたとしても、独裁者なら攻撃していいわけがない。化学兵器禁止条約違反があったとしても、軍事制裁は認められていない。

「一線を越えた」?

 トランプ政権は、3月末に「イスラム国」と闘うアサド政権の交代は求めないと表明したところだった。なぜ突然対応を変えたのか。「一線を越えた(化学兵器使用)から」と言うが、あまりにウソ臭い。トランプは、かつてアサドが化学兵器を使ったことを承知の上で、オバマの空爆方針に反対していたはずだ。

 歴史的な低支持率や政権内での混乱、目玉公約でのつまずきなど早くも行き詰まり始めたトランプにとって、起死回生を狙った「強い大統領」の「決断」を示したかったかもしれない。重要なのは、トランプを動かしているのは軍産複合体の意向であることだ。

 シリアでは、アサド政権と反政府勢力の停戦合意を履行させるため、ロシア、トルコ、イランによる停戦監視の仕組みを設けるなど、和平へのプロセスが示されていた。トランプは、アサド政権を容認し、ロシア主導の収拾を受け入れる方が米経済にとって利益になる、と口にしていた。

 だが、軍産複合体にとって、中東は不安定でなければならない。軍事費削減を大軍拡に転じさせたトランプ政権。軍産複合体の意を受けた政策は着々と進んでいた。トランプはアサドを敵とする大義名分が欲しかったのだ。

いち早く支持した安倍

 安倍晋三首相は、どの国よりも早く「化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないとの米国政府の決意」に「支持」を表明。国際法違反の攻撃に「理解」を示した。その上安倍は、朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を念頭に「東アジアでも大量破壊兵器の脅威は深刻さを増している」として「トランプ大統領の強いコミットメントを高く評価する」とまで付け加えた。朝鮮への軍事行動さえけしかける発言だ。

 イラク戦争開戦時もそうだった。大量破壊兵器の存在をでっち上げ侵略を開始した米ブッシュ政権を、小泉政権は真っ先に支持した。まして、朝鮮・中国の脅威を利用し軍拡を続ける安倍には何のためらいもない。化学兵器が誰のものだろうがおかまいなし。59発のトマホークが「化学兵器工場」ではなく軍事施設周辺を破壊し子どもを含む市民を殺害しても、問題ではない。

 トランプと安倍。似た者同士が軍事力を手に市民の命をもてあそぶ。その挑発に朝鮮の金正恩(キムジョンウン)ものるかもしれない。そんな恐れが現実のものとなっている。危険な戦争屋たちを一刻も早く政権の座から引きずり下ろさねばならない。

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