2017年04月28日 1475号

【軍事力で屈服迫るトランプ外交/先制攻撃を公言する安倍政権/朝鮮の核は平和的解決を】

 米トランプ政権によるシリア、アフガン爆撃や先制攻撃論。対する朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)金正恩(キムジョンウン)政権の核・ミサイル実験という軍事的挑発合戦で、朝鮮半島「一触即発」の危機は今も続く。民衆を犠牲にする軍事的脅迫は断じて許されない。先制攻撃能力の保有を公然と主張する自民党・安倍政権も同罪だ。好戦勢力の思い通りにさせてはならない

危険な軍事挑発合戦

 朝鮮「最大の祝日」と言われる故金日成(キムイルソン)生誕記念日の4月15日。日米韓は、朝鮮がこの日に合わせ6回目の核実験か弾道ミサイル発射実験を行うのではないかと想定し、軍事緊張を煽ってきた。

 トランプ政権は、「北朝鮮が核実験を強行しようとすれば『先制攻撃』を行う準備に入った」(4/13米NBC)とマスコミに報道させ、「先に手を出す」可能性を示唆した。1週間前の4月7日にはシリアの空軍基地を突然爆撃、13日にはアフガニスタンで大型爆弾GBU43を投下、破壊力を見せつけている。米韓軍事演習を終え、オーストラリアに向う予定の空母カールビンソンを再び朝鮮半島へと戻した。明らかな戦争挑発だ。

 一方、朝鮮の金正恩政権は「米国がぴくりとでも動けば、敵対勢力の頭上に核の雷を落とす」と報復攻撃を宣言。米軍による朝鮮攻撃が行われれば、核ミサイルが韓国や在日米軍基地に向かって発射される事態まで想定される。

 4月15日、「一線を越える」ことはなかった。トランプは軍事脅迫で思い通りできると思わないことだ。金正恩は核ミサイルの開発が米軍の攻撃を抑え込んだと勘違いしないことだ。核ボタンに手をかけたままで「国家の安定」が得られるわけがない。為政者の「本気度比べ」で民衆の命が左右されてはたまらない。一切の軍事力を放棄せよ。これが、唯一の教訓だ。

「先制攻撃」を公然化

 トランプ政権とともに、危険な動きを見せているのが自民党・安倍政権だ。日本列島が朝鮮の報復目標になることを承知で、トランプの軍事制裁を支持している。

 自民党安全保障調査会と国防部会は3月29日、「北朝鮮の脅威が新たな段階に突入した」として「敵ミサイル基地を打撃できる能力を持て」との提言をまとめ、30日に安倍に手渡している。座長を務めた小野寺元防衛大臣は「専守防衛の立場で、誘導弾攻撃を受けた場合を想定したもの。先制攻撃ではない」と言い訳しているが、「やられる前にやっつけろ」となるのは目に見えている。

 敵基地攻撃能力とは巡航ミサイルの保有だけではない。敵基地の位置情報を把握するための偵察衛星や無人偵察機、敵レーダーサイトをかく乱する電子攻撃機やステルス戦闘爆撃機などがセットだ。自衛隊はすでにF35ステルス戦闘機の導入を進めている。米軍との共同行動を足掛かりに、イージス艦搭載のSM―3、地対空誘導弾PAC―3に加え、THAAD(高高度ミサイル迎撃システム)導入をはかり、攻撃力を確実に高めようとしている。

 3月に始まった定例の米韓合同軍事演習は朝鮮制圧シナリオに基づく。今年は海軍急襲部隊「SEALs」が初参加し、「斬首」作戦(潜伏する金正恩の殺害計画)を繰り返し訓練。すでにカールビンソンと海自の共同演習も行われ、自衛隊も基地攻撃能力を手に「先制攻撃」態勢に一体化することになる。

戦争でなく6か国協議へ

 軍事力が核開発の抑止力になるはずがない。平和的外交努力こそ、すべての核廃棄への唯一の道だ。

 朝鮮の核開発を平和的に断念させる枠組みがある。米国・中国・ロシア・日本・韓国・朝鮮の6か国協議。2003年から09年まで6回の協議が重ねられ、軽水炉型原発の提供と引き換えに核施設の廃棄が合意されるなどの進展を見た。だが、米国による資金凍結解除が確認できないとの理由で休会。朝鮮は離脱を宣言しているが、軍事挑発ではなく、この枠組みの再構築が求められている。

 議長国を務めてきた中国。習近平国家主席は米中会談の場で、トランプからシリア爆撃を聞かされた時、「理解を示した」と報道された。シリア爆撃は朝鮮に対するメッセージだと言われていた。だが中国が朝鮮への軍事制裁を認めたわけではない。米軍の朝鮮攻撃がもたらす被害が中国にも及ぶのは明らかだ。習は朝鮮・米国に自重を促し、朝鮮は19年ぶりに外交委員会を設置した。再開の可能性を高めるべきだ。

 朝鮮をめぐる平和的解決で本来役割を担うべきは日本だ。日朝ピョンヤン宣言(2002年)に基づく国交回復交渉で東アジアの緊張緩和を進めることこそ必要だ。それは南西諸島をめぐる中国対日米の軍事緊張を抑止する道であり、軍拡路線阻止への道でもある。



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