2017年08月04日 1488号

【南相馬20ミリ撤回訴訟 第8回口頭弁論/年1ミリ以下でないと暮らせない】

 年間20ミリシーベルトを基準とした避難勧奨地点の解除は違法だとして、住民808人が国を訴えた「南相馬・避難20ミリシーベルト基準撤回訴訟」の第8回口頭弁論が7月20日、東京地裁で開かれた。現地から原告団長の菅野秀一さんら10人を超す原告が参加した。

 陳述に立った原告の竹内さんは、住民説明会・戸別訪問・相談会など手順を踏んで解除の手続きを行ったとする被告の主張を批判した。「出された意見はすべて『解除反対』だったはずだ。(8つある行政区の)区長も賛成は誰ひとりいなかった。線量が下がるまで解除しないでほしいとの要望は全く反映されていない。1ミリシーベルトでないと安心して過ごせない」

 弁護団は低線量被ばくの健康影響を取り上げ、「広島・長崎・チェルノブイリの研究から、数十年後に循環器・呼吸器・消化器に影響が出ている科学的知見を考慮すべき。チェルノブイリでIAEA(国際原子力機関)は当初30年後に333例の甲状腺がん発症と予測していたが、実際は4千以上。10倍以上で過小評価だ」と問題視した。

 報告集会で福田健治弁護士は「20ミリの根拠は低線量ワーキンググループ審議会の報告書に基づくものだが、ずっと低い線量でも健康影響があるというのが科学的知見だ。解除のプロセスに住民が参加できなかったことも大きな問題」と述べた。

 原告の小沢洋一さんらは4月末に発生した浪江町の山林火災について19日、福島県に要請した。「県は『帰還困難区域内の火事で人はいない。線量に大きな変化はない』と言うが、独自のエアダストサンプラ(大気中粉塵試料採取器)調査、リネン(麻)吸着法調査では、南相馬・浪江・田村で平常時の4〜5倍のセシウム濃度上昇が確認された」と批判した。

 次回は10月16日。

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