2017年08月11日 1489号

【みる…よむ…サナテレビ449/2017年7月29日配信 イラク平和テレビ局in Japan/テロの被害者に補償を行え!−イラクの障がい者の怒り】

 2017年6月、サナテレビはIS(「イスラム国」)との戦闘や爆弾テロ攻撃で負傷し障がいを負った人たちを取材した。犠牲となった警察官や兵士、市民は、まともに補償しないアバディ政権に対する怒りをぶつけた。

 2003年のイラク戦争・占領から現在のISに至るまで、イラク市民はイスラム主義勢力のテロ攻撃に苦しめられてきた。市民の犠牲者は毎年数千人にも及ぶ。負傷者はその数倍だ。

 ところが、マスコミが取り上げるのは爆弾攻撃などでの死者・負傷数のみで、その後の家族や負傷者のことが伝えられることはほとんどない。サナテレビはテロ攻撃の被害者を直接取材して視聴者に伝えている。

 最初に登場する警察官のアシュラフ・アリ・アキリさんは2004年4月29日、ちょうどイラク占領開始から1年後に仕掛け爆弾の爆発によって左足を失った。切断された足をカメラにむけたままインタビューに応じる姿には胸が痛む。ところが、こんな被害を受けたアシュラフさんは政府から13年間放置されたままなのである。彼はアバディ首相に「私を、自分の息子のように守ってください」と要求する。

 モスルをISから奪い返す作戦に参加していた兵士は、3年前にモスル近辺のチグリス川で負傷し両腕が麻痺している。ところが政府からは全く補償を受けていない。理由は、当局がなんと名前の表記を間違っていたからだという。彼は自分の麻痺した腕をカメラに向けてこの不条理を糾弾し、「国防大臣は私の問題を解決しろ」と訴える。

IS掃討の陰で

 最後に登場する学生は2006年にマフムディヤ地区への爆弾攻撃で両足と右目を失った。父親も自宅に爆弾攻撃を受けて亡くなった。しかし政府からは何の補償もなく、今は大学生だが就職の展望はない。

 2017年7月、アバディ政権はモスルのISを一掃したとして勝利宣言を行った。しかし治安悪化の中で負傷し、障がいを負った人びとに対する補償はほとんど行われていない。

 テロ攻撃の犠牲者たちのサナテレビに対する信頼感は大きい。サナテレビはテロの被害者たちの実態を明らかにし、共に補償を要求しようと市民に訴えているのである。

(イラク平和テレビ局 in Japan代表・森文洋)

http://peacetv.jp/



ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS