2017年08月11日 1489号

【歴史的な核兵器禁止条約採択/核兵器は人道に反し違法/核廃絶拒む日本政府】

 7月7日、核兵器の使用、開発、保有などを法的に禁止する核兵器禁止条約が国連本部での条約交渉会議で採択された。「生物兵器禁止」(1972年)、「化学兵器禁止」(93年)、「対人地雷禁止」(97年)、「クラスター爆弾禁止」(2008年)に続いて、人類が作り出した最悪の兵器である核兵器違法化の国際的な合意が成立したのだ。これは、核兵器の最大の被害者であるヒロシマ・ナガサキの原爆被爆者と核のない世界をめざしてきた民衆による70年間にわたる闘いの成果だ。

すべての国に責任

 条約は前文で核兵器の使用が「破局的な人道上の結果を招く」ことに懸念を表明し「全廃こそがいかなる状況においても核兵器が二度と使われないことを保証する唯一の方法である」と指摘。「核兵器の存在による危険性が全人類の安全保障に関わるものである」とし「すべての国が核兵器の使用防止に向けた責任を共有している」と強調した。

 特に「核兵器の使用による被害者(ヒバクシャ)の受け入れがたい苦しみと危害に留意」と被爆者の存在を明記。その上で、「いかなる核兵器の使用も武力紛争に適用される国際法の規則、とりわけ人道法の原則と規則に反し、…人間性の原則や公共の良心に反する」と断じた。

 核兵器の使用は全人類を危険にさらす犯罪行為であり、人として許されないことであるという評価を国際的に確定した。そしてその不使用を保障するための核兵器全廃が、すべての国の責任であることを明らかにしたのだ。

核抑止力を否定

 この前文をうけ、本文では核兵器の開発、実験、製造、取得、保有、貯蔵、移転を禁止した。兵器としての性能に至っていない「核爆発装置」も同様とした。そして、5月時点の草案では除外されていた「核兵器等を使用し、または、『使用する』と脅すこと」をも禁じた。また、これら禁止事項を他者に奨励・援助・勧誘することも禁じた。およそ核兵器に関するあらゆる事柄が、人道に反する行為として禁じられたといえる。

 特に「核兵器による脅し」を禁じたことの意義は大きい。「核抑止力」の否定となるからだ。

 条約は前文で「軍事や安全保障上の概念や教義、政策における核兵器への継続的依存」を批判している。「核抑止力」というのは「核を持っていれば反撃を恐れた他国が攻撃できず、安全保障に役立つ」との主張だ。当然、立証されているわけではなく、いわば核抑止信仰≠フ「教義」にすぎない。しかも、通常兵器での攻撃も含め「攻撃してきたら、核攻撃するぞ」との脅しだ。核兵器禁止条約は核抑止論に対する明確な批判だ。

戦争政策こそ元凶

 条約を採択した交渉会議には129か国が参加した。国連加盟国の7割近くにのぼる。だが日本政府は、核保有国とともに交渉会議そのものに参加しなかった。条約採択当日、別所国連大使は「署名しない」と明言した。そもそも日本政府は、「(核廃絶に向けた)実践的措置を積み重ねる我が国の基本的立場に合致しない」「核保有国と非保有国が協力することが必要」などとし、核兵器禁止条約交渉開始そのものに反対している。

 政府が言う「実践的措置」とは、NPT(核不拡散条約)体制下での核軍縮交渉をさす。だが、NPT発効後も東西冷戦下で核兵器は増え続け、現在も1万5千発の核弾頭が残っている。核保有国と日本・NATO(北大西洋条約機構)諸国など同盟国が、核保有による軍事的・政治的優位を手放さないからだ。

 しかも日本政府は一貫して核武装国となる選択肢を放棄していない。「憲法は核保有を禁じていないが、政策の選択として持たない」と言っているにすぎない。改憲と戦争推進の安倍は、かつて公然と日本の核武装を肯定しており、盟友である日本維新の会・松井代表も2016年3月、戦争法を巡る議論の中で「自国で武力を持つなら最終兵器が必要となる」と核武装選択の可能性を肯定した。日米軍事同盟を背景とした覇権を維持・拡大する戦争勢力は、核兵器を手放せない。根は戦争政策にある。

 戦争法反対、改憲阻止、沖縄新基地建設反対の闘いと一つに、政府に核兵器禁止条約への加入を決断させなければならない。

 
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