2017年08月11日 1489号

【未来への責任(230)沖縄戦遺骨DNA鑑定へ(下)】

 もはや遺族に時間はない。ガマフヤーは「戦没者遺骨を家族の元へ6・22沖縄集会」の開催と遺族のDNA鑑定集団申請を呼びかけた。

 5月19日『琉球新報』は1面トップ記事で「沖縄戦戦没者遺骨、民間人DNA鑑定も申請。ガマフヤー集団で初、7月にも」と伝えた。この日から状況は大きく変わった。NHKが集団申請の取り組みを全国放送し、本土の全国紙も集団申請に参加する遺族の声を取り上げる。6月23日には『朝日新聞』が社説でガマフヤーの訴えを取り上げ、各新聞社は1人1人の思いを体験から詳しく報道するようになった。「11人の家族の内9人を失った。だれの遺骨も見つかっていない」という遺族のガマでの経験が証言される。遺族の皆さんが「最後の機会」としてこのDNA鑑定にかけていることが報道された。

 韓国人遺族の問題に話を移す。22日の沖縄集会に参加したイ・ヒジャさんは「日本政府は沖縄に動員された韓国人の死亡記録が無いため行方不明と規定し、鑑定対象外としている」と糾弾した。厚労省の「日本人でも死亡記録のない人は鑑定対象ではないのだから差別はない」という無責任な主張が暴露され、批判を受けている。行方不明のまま放置してきた責任が問われているのだ。韓国の聯合ニュースもこの集会を伝えた。

 ガマフヤーは7月12日参議院議員会館内で、DNA鑑定集団申請予定者名簿(第1次)と要請書を厚労省に提出した。本土の軍人遺族2人と沖縄県民遺族1人が参加した。県民遺族のMさんは、私たちが摩文仁(まぶに)でまいたチラシを家族と一緒に受け取った方だ。ビラ1枚がここまでの力を発揮するとは、沖縄が動いている証である。沖縄県選出議員3名を含め国会議員6名が同席、更に沖縄県選出の自民党を含む3事務所が代理出席し、全沖縄の政治勢力が支援している姿を厚労省に突きつけた。

 集団申請予定者名簿には135人の遺族が名を連ね、うち沖縄県民遺族は109人に上った。申請の枠組みが、死亡地などの証明を求めたり、希望する遺族を選別排除することの無いように要請書も提出した。遺族や沖縄県選出国会議員からは「どこで死んだかわからない」のが沖縄戦の実相であることが次々語られた。この中で、厚労省は7月中の申請受け付け開始を表明。マスコミに対し、「提出された135名の遺族に今後厚労省側から連絡をし、申請方法を伝える。死亡場所がはっきりしなくても排除しない」などを表明した。大きな成果である。当日参加したマスコミ関係者は30人にも上る。夕方にはテレビが、翌日には各地方紙や全国紙が報道を行った。特に沖縄では『沖縄タイムス』が1面トップ記事で報道、社説で詳しく取り上げた。沖縄県民1人1人に訴えが伝わっていく大きな力となることは言うまでもない。

 最後の機会として立ち上がった遺族を支えなければならない。遺骨の鑑定基準、鑑定の方法、体制についても現状は多くの問題を抱えている。遺骨の鑑定がおざなりになれば遺族の要求も実現できない。7月26日ついに厚労省は集団申請の135名の申請者に申請書を送ることを伝えてきた。

(「戦没者遺骨を家族の元へ」連絡会 上田慶司)

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