2017年08月18・25日 1490号

【大阪地裁判決/朝鮮高校無償化除外は違法、無効/政府によるヘイトクライムを断罪】

 朝鮮学校を高校無償化から排除したのは違法として大阪朝鮮高級学校を運営する大阪朝鮮学園が国を訴えた裁判で、大阪地裁は7月28日、国の処分は教育の機会均等の確保とは無関係な外交的、政治的判断に基づいたもので違法、無効であるとして処分の取り消しと無償化の指定を命じる画期的判決を言い渡した。

 全国(東京、愛知、大阪、広島、福岡)で同様の裁判が争われているが、7月19日に初めて出された広島地裁の判決は国の主張を全面的に認める不当判決であった。

安倍政権が除外通知

 経過を振り返る。

 民主党政権下の2010年3月、「高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することを目的」とした「高校無償化法」が成立した。この法律は、学校教育法に定める学校(一条校)だけでなく、専修学校や各種学校であっても高等学校に類する課程を置く学校についても適用対象とされた。

 同法に基づく省令で、外国人学校では(1)大使館などにより日本の高等学校に対応する教育課程と確認できる学校(2)文部科学省が定める国際的教育評価機関の認証を受けた学校に加え、(3)それ以外の「高等学校に類する課程を置く」各種学校で文科大臣が指定する学校についても無償化の対象とされた。朝鮮学校は、民族教育権を認めない日本政府によって各種学校に位置づけられてきたため、この条項の対象として扱われる。

 検討会議を経て2010年11月、指定の要件が文科大決定の臣「規程」として定められ、これに基づいて朝鮮学校やコリア国際学園などが無償化適用の申請を行った。しかし、同時期に起こった韓国・延坪(ヨンビョン)島砲撃事件を口実として朝鮮学校の適用審査は2011年8月まで一時凍結。再開後、7回の審査会が持たれたが結論は出されなかった。

 一方、拉致問題を口実に朝鮮学校の無償化からの排除を主張していた自民党は2012年、第2次安倍内閣の下村博文・文科相が朝鮮学校を対象から除外することを表明。翌2013年3月に審査会の結論も出ない中、「北朝鮮や朝鮮総連との密接な関係が疑われ、就学支援金が授業料に充てられないことが懸念される」として指定の根拠となる省令の規定を削除し、「規程」第13条(就学支援金が授業料に確実に当てられるなど適正な学校運営がなされていることを要件として定めた条項)を根拠に朝鮮高級学校に対して無償化不指定を通知した。

ただちに無償化を

 この強引な朝鮮学校排除に対し、大阪地裁判決は根拠となる省令の規定の削除について「教育の機会均等の確保とは無関係な外交的、政治的判断に基づいて…本件規定を削除したことは違法、無効と解すべきである」と断じた。また、「規程」13条について朝鮮総連の「不当な支配」があったとする国の主張に対して、教育基本法第16条1項は行政権力による介入を抑制するための規定であり、文科大臣の裁量権は認められないとした。

 少し長いが、判決文を引用する。「母国語と、母国の歴史及び文化についての教育は、民族教育にとって重要な意義を有し、民族的自覚及び民族的自尊心を醸成する上で基本的な教育というべきである。朝鮮高級学校が朝鮮語による教育を行い、北朝鮮の視座から歴史的・社会的・地理的事象を教えるとともに北朝鮮を建国し現在まで統治してきた北朝鮮の国家理念を肯定的に評価することも、朝鮮高級学校の上記教育目的それ自体には沿うものということができ、朝鮮高級学校が北朝鮮からの不当な支配により、自主性を失い、上記のような教育を余儀なくされているとは直ちに認めがたい」

 朝鮮総連の学校への「関与」は不当な支配に当たらないとし、民族教育権という言葉こそ使わなかったが、国家によるヘイトクライムである朝鮮学校無償化排除にノーを突きつける画期的な判断を下したのである。

 無償化適用を求めた250回を超える大阪府庁前「火曜行動」、日本、韓国の「ウリハッキョ(私たちの学校)と子どもたちを守る市民の会」など内外の支援の運動、何より当事者である高級学校生徒が裁判闘争に立ち上がって証言台に立ち自らの思いを直接訴えたこと。当事者と市民の運動が裁判所を動した。

 安倍政権は人権無視の差別政策を撤回し、直ちに無償化指定を行わなければならない。

 
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