2017年08月18・25日 1490号

【2017ZENKO「福島と共に」分科会/原発被害賠償の完全実施を/一人も路頭に迷わせるな】

 今秋から来春にかけて福島原発事故集団訴訟と区域外避難者の住宅問題が一つの山場を迎える。7月30日に行われたZENKO第4分科会「福島と共に、放射能被ばくと再稼働に反対する」では、避難者・支援者が「国の過失責任を基本に損害賠償の完全実施を」「住宅追い出しに反対し、一人も路頭に迷わせるな」と訴えた。

 飯舘村の佐藤八郎さんは物言えぬ福島の雰囲気を危惧する。「(国際原子力ロビーによる被ばく強要プロジェクト)エートスは最初から地域の顔・役職に当たる人をきちんと固めていた。『チェルノブイリのようにはならない、大丈夫だ』とどんどん積み上げてきた。先日の伊達市(飯舘村民の多くの避難先)でのエートス会議も、まるで放射能がなかったかのような雰囲気で、地元紙もそれに従う。こっちはこっちで(地域に影響もつ人が)『私は被ばくした』と実態をきちんと発言していけば輪は広がると思う」

 「月桃の花」歌舞団は福島各地で原発・被ばくをテーマにした公演を行っている。文化活動を通して物言う市民に出会えることを報告し、「文化の力で何でも言える空間や人と人がつながっていける場をつくりたい」と述べた。

 原発事故の過失責任・原状回復とは別に、今日に至る低線量被ばくの強要を争点に取り組んでいるのが、子ども脱被ばく裁判、南相馬20ミリ撤回訴訟、井戸川裁判だ。子ども脱被ばく裁判を支える会・東日本の男性は「8月8日に第11回の弁論がある。子どもたちが被ばくの心配なく教育を受ける権利を求め、無用な被ばくをさせた責任を追及する裁判だ。福島では、疲れやすく体力が落ちている子によく出会う」と心配した。

 全国約30か所、1万人以上が原告となっている福島原発損害賠償集団訴訟は、国の過失責任を認定した前橋地裁判決を不動のものにし、賠償要求額支払いの実現で被害の回復をはかることを共通課題とする。第2弾となる9月22日の千葉地裁判決に向け、支援する会の山本進さんは「公正判決を求める署名は合計4万3千筆を超えた。9月2日には判決前大集会を開く。あとに続く判決にいい影響をもたらしたい」と決意。来春の判決が予定される京都訴訟の支援する会・奥森祥陽さんは「前橋判決から、原告自らが避難生活の全体像、被害の実相を伝えられる運動を強化していく必要性を実感した。原告にとことん寄り添って勝ち取ろう」と呼びかけた。

 田村市から避難して都営住宅に住む熊本美彌子さんは「住宅裁判を準備する会」の世話人代表。「福島の家は除染後も土壌は放射線管理区域の2倍に当たる8万ベクレルある。農業や栽培などの作業ができる環境にないため、避難を続けている。住宅無償提供打ち切りに対し、一時使用許可申請を行ったが、東京都は許可か不許可かの判断を示さない。弁護士に依頼し、不許可なら裁判も辞さない覚悟で住み続けているが、提訴には至っていない。原発被害による住宅補償の法律・制度確立をめざして闘う」と支援を訴えた。富岡町から大阪に避難した女性は「今は民間家賃を東電の賠償金で支払っているが、この4月に避難指示が解除され今後は賠償金の打ち切りも出てくるので、とても悩んでいる」。

 都内の避難者らでつくるキビタキの会の男性は「住宅問題はこの1年8か月が山場になる。国家公務員宿舎の継続入居切れ、福島県の民間家賃補助終了、避難指示解除区域の避難者への損害賠償打ち切りが重なる。区域外避難者の住宅を確保させる今の運動は、大きな闘いにつながっていく意義がある」と連帯を呼びかけた。
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