2017年08月18・25日 1490号【安倍政権の隠ぺい体質／隠せば出世、暴露すれば逮捕／民主主義のルールを完全無視】 |
国有地の不正売却疑惑（森友学園問題）、総理の友人への便宜供与疑惑（加計（かけ）学園問題）、そして自衛隊「日報」問題。３つの事案の共通点は何か。「安倍首相が悪い」。そりゃそうだけど、もっと具体的に。「政府の度し難い隠ぺい体質」。ご名答。政策決定に都合の悪い情報を覆い隠す戦争国家の特徴がはっきり現れているのである。あの財務官僚が栄転森友学園前理事長の籠池泰典夫妻が７月31日、大阪地検特捜部に逮捕された。国からの補助金をだましとった「詐欺」の容疑である。刑事告発を受けた容疑は補助金適正化法違反だった。それよりも法定刑が重い詐欺罪を適用し、逮捕に踏み切ったのはどうしてなのか。自分たちを切り捨てた安倍晋三首相への怒りをメディアにぶちまけていた籠池夫妻の口封じを狙ったとしか思えない。 籠池逮捕と対照的なのが、「ミスター森友」こと佐川宣寿・財務省理財局長の国税庁長官への栄転である（7/5付）。森友疑惑の核心は10億円級の国有地が実質タダで学園に売却された件だが、佐川は国会で野党側の追及をかわし続けた。売却の経緯を示せと迫られても「記録は破棄した」とくり返した。 「事前に価格交渉をしたことはない」。佐川は国会で言い切った。だが実際には、土地売買を担当する財務省近畿財務局が学園側に「いくらまでなら支払えるか」と打診していた（7/26ＮＨＫ報道）。財務局の担当者が「理事長がおっしゃる０円に近い金額まで、私はできるだけ努力する作業を今やっています」と語る音声データも出てきた（8/4ＦＮＮ報道）。 これほどの特例措置が財務省独自の判断で行われるはずがない。籠池前理事長が主張するように、新設予定小学校の名誉校長だった安倍昭恵総理夫人が「神風の発生装置」となったことは明らかだ。 理財局長で退官とみられていた佐川は、安倍夫妻を守ったことを官邸に評価され、国税庁長官に成り上がった。ただし国税庁には苦情の電話が殺到している。当然だ。こんなウソつきが徴税組織のトップだなんてありえない。 凶悪事件も隠ぺい加計学園問題でも、「総理のご意向」文書の存在否定など、安倍政権の隠ぺい体質があらわになった。先日の閉会中審査では、経済産業省の柳瀬唯夫審議官が「記憶にございません」を７回も連発してみせた。２０１５年４月に今治市の職員と複数の加計学園幹部が首相官邸を訪れ、当時首相秘書官だった柳瀬と面会している。「加計ありき」を証明するこの事実を柳瀬は頑として認めなかった。柳瀬は経産省の「エース官僚」で原子力推進派の中核である。首相秘書官時代から菅義偉官房長官との関係が深い。今回も「安倍忠誠」を態度で示したことで、将来の次官昇格を確実視されているという（7/25日刊ゲンダイ）。 公文書の隠ぺいだけではない。安倍に媚を売る閣僚たちは凶悪犯罪すら握りつぶす。安倍官邸御用ライターとして知られる山口敬之のレイプ事件もみ消しがそうだ。被害女性が実名顔だし会見で語ったように、山口には準強姦罪容疑で逮捕状まで出ていた。ところが警察上層部から所轄署に待ったがかかり、捜査は打ち切りとなった。 首謀者は当時の警視庁刑事部長・中村格（いたる）である。「菅官房長官の片腕」として有名な警察官僚だ。菅の秘書官に出向していた際、菅が気に入らない報道に抗議するメールをテレビ局幹部に送りつけていたことでも知られている。 中村は「週刊新潮」の取材に対し「（逮捕は必要ないと）私が判断した」と明言した。新潮によれば、「女も就職の世話をしてほしいという思惑があった。所詮男女の揉め事」と周囲に漏らしていたという（中村本人は否定）。 こんなゲス野郎が、警察庁長官・警視総監を射程圏内に収める警察庁総括審議官に就任することが固まった（週刊新潮８月３日号）。安倍政権による国政私物化ここに極まれりと言うほかない。 全く懲りない面々最後は、陸上自衛隊ＰＫＯ部隊の日報隠ぺい問題だ。この件では稲田朋美防衛相が引責辞任、事務方（防衛事務次官）と制服組（陸上幕僚長）のトップが辞職に追い込まれた。さすがに反省しているだろうと思ったら、これが大きな間違いだった。７月31日に開かれた自民党の国防部会。出席した議員からは「日報は国民に報告するものではなく、指揮官に報告するものだ。なぜ公開しないといけないのか」といった声が続出したという（8/1朝日）。自民党は閉会中審査に稲田を呼ぶことも「辞任した大臣を国会に呼び出すことはやってはいけない」と言って拒んだ。この迷言を吐いた竹下亘（わたる）・国対委員長は、今回の内閣改造にともなう党人事で総務会長に就任した。 これが安倍首相の言う「謙虚に丁寧に」の実態だ。情報公開という民主主義の基本を無視する安倍政権につける薬はない。害毒を断つには退陣しかないのである。 （Ｍ）   |