2017年10月06日 1496号

【福島事故張本人 東電の再稼働を容認/安倍政権追随の原子力規制委】

 原子力規制委員会は9月13日の会合で、柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)について、東京電力にその運転資格があり、両原発が新規制基準に「適合」するとした評価書案のとりまとめで一致。27日にも事実上の「合格」とされる。田中俊一委員長はこれまで、福島原発事故を起こした東電には原発を運転する資格がないと主張してきた。退任(9/18)直前のこの「変節」に強い批判の声が上がる。

「決意」で再稼働了承

 田中委員長のでたらめに加え、驚かされるのは規制委が「適合」とした理由だ。小早川智明東電社長が「福島第一の廃炉をやり遂げることと、柏崎刈羽の安全性向上を両立していく」との「決意表明」をしたこと、田中委員長が現地を視察、現場の安全意識が向上していると「感じた」こと―が東電に原発の運転適格性を認めた根拠という。

 未曾有の大事故を起こした東電が決意表明するだけで原発の再稼働を認める。決意だけで原発の安全が保たれるなど、どこまで悪い冗談か。これでは「大和魂さえあれば米軍艦を竹槍で倒せる」と主張した旧日本軍と変わらない。科学も論理も捨て去った愚かな精神主義としか言いようがない。

 このまま再稼働を認めれば、その先に待つのは旧日本軍と同じ破滅だけだ。

事故だらけの柏崎刈羽

 2007年の新潟県中越沖地震で自動停止した柏崎刈羽原発は事故直後「微量」の放射能漏れを起こした。地震の揺れによって原子炉停止に必要な制御棒(6号機2本、7号機1本)が変形し抜けなくなる異常もあった。変形した制御棒は引き抜きに成功しても、原子炉を停止させる際に挿入できない恐れがある。たかが数本ではすまされない重大なトラブルだ。

 2009年に試験運転を再開した7号機では、緊急時に炉内に冷却水を送る原子炉隔離時冷却系(RCIC)に不具合が発生するという重大事態を引き起こしている。RCICは、配管破断などで冷却水が失われた際に、外部電源により炉心に冷却水を緊急注入する緊急炉心冷却装置(ECCS)の一部だ。作動しなければ即メルトダウンを招く重要な装置だが、東電は不具合後もまともな検証をせず試験運転を続けた。

 2012年には、5号機使用済み燃料プールで燃料棒や通水管の変形も見つかっている。通水管が変形すれば冷却水が送られず、燃料棒を冷却できなくなる。

 福島第一原発でも、東日本大震災の直前の2010年6月、ECCSが作動する重大事故が起きたが、東電はすぐに事実を公表せず隠蔽した(本紙1239号)。柏崎刈羽、福島でのこれらの事故をまともに検証せず、対策も講じないまま福島の惨事を引き起こした東電に原発運転の適格性などあるわけがない。

 柏崎刈羽原発では、9月23日にも工事中の煙が事務室に流れ込み、火災警報器が作動するトラブルが起きている。地方の中小建設会社でもあり得ないようなお粗末なミスをする東電のどこに「現場の安全意識の向上」が見られるのか。規制委は市民に説明しなければならない。

県知事支え再稼働阻止

 規制委が再稼働推進の結論ありきで合格の「評価書」を交付しても、柏崎刈羽原発の再稼働は見通せない。昨年、福島事故の検証がないままの東電による再稼働に反対を訴えて当選した米山隆一新潟県知事が、再稼働に同意しない姿勢を明らかにしているからだ。中越沖地震以後の東電の不誠実な対応に不信を募らせた泉田裕彦前知事が、再稼働に同意するには「福島事故の検証が条件」とし、米山知事もその路線を引き継いでいる。一方で、再稼働反対を貫くよう求める市民の期待を裏切って、泉田前知事が自民党から総選挙に出馬する動きもあり、今後は米山知事への再稼働圧力が強まると予想される。

 米山知事の当選は、連合―電力総連の妨害をはねのけ、草の根から市民が作り上げた野党共闘によって勝ち取られた。再稼働を阻止するためには市民が再度結集し、米山知事が不当な圧力に屈しないよう支えることが必要だ。総選挙でも安倍再稼働路線にノーを突きつけよう。

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