2017年10月06日 1496号

【原発避難者千葉訴訟で不当判決/国の責任を認めず/「安倍忖度裁判だ」】

 原発避難者の損害賠償請求訴訟で千葉地裁は9月22日、国の責任を免罪する不当判決を言い渡した。「国は巨大津波を予見できたが、かりに対策をとったとしても結果的に事故は回避できなかった」という開き直り判決だ。

 被告・国は、事故の責任を回避するために“予測をはるかに上回る事故だったから(想定外)”と主張してきた。予測できたとしても何をしても無駄だったとする判決の論法によるなら、人災ではない自然災害のように国の責任は問題にされなくなる。全国の損害賠償集団訴訟として2度目の判決だが、国の過失責任を認定した3月の前橋地裁判決からは大きく後退した。

 一方、東京電力に対しては18世帯45人の原告(1世帯は区域外避難)のうち17世帯42人に計約3億7600万円の支払いを命じた。コミュニティの崩壊などへの「ふるさと喪失慰謝料」も認めた。

 特徴は、区域外避難の原告(1世帯4人)についても「不安や恐怖を感じることの合理性」を認め、その理由として低線量被曝に触れて「年間20ミリシーベルト以下の被曝が健康被害を与えると認めるのは困難」としながらも「100ミリシーベルト以下で健康被害のリスクがないという科学的証明もない」と指摘したことだ。弁護団・支援者による原告宅土壌汚染調査や裁判長現地検証の要請、低線量被曝の専門家証人要請などの反映といえる。

 判決当日、千葉地裁前には約300人がつめかけた。結果を待ち構える支援者に「国の責任を否定」「東電の損害賠償を一部認める」の垂れ幕が掲げられると、「不当判決だ」の声が上がった。

 報告集会で滝沢信弁護団事務局長は「事故の法的責任を明らかにする本訴訟の大きな目的が否定された。原告も納得していないので控訴する方向。これにくじけるわけにはいかない」と決意。浪江から避難中の原告・瀬尾誠さんは「(前橋地裁判決が出たあとで)国の責任が認められないとは考えてもいなかった。(ふるさと喪失慰謝料が認められたのは)画期的なことで、 闘いはこれからだと思う」と述べた。

 各地の訴訟団や支援者が次々とあいさつ。10月10日福島地裁での判決を控えた生業(なりわい)訴訟からは馬奈木巌太郎(まなぎいずたろう)弁護士が「非常に悔しい判決。被害者への救済が十分でないことは認めた。国の責任を否定したままでは終わらない、がみんなの思い」。かながわ訴訟の黒澤知宏弁護士は「(不当判決だが)原告の皆さんがどうなのかが、重要なこと。集団訴訟は一か所だけでなく、全国で一つ一つ積み上げていくものだから、つないでいこう」。

 原告側証人に立った国会事故調の田中三彦元委員は「安倍忖度(そんたく)裁判だ。再稼働を進める原子力規制委員会・田中俊一前委員長の『審査が通ったからといって、原発が安全だとは言っていない』と(判決の)『予見できたが責任はない』とは論理は同じ」と批判した。

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