2017年10月13日 1497号

【安倍首相の「解散理由」/見え透いた嘘のオンパレード/政権の存在自体が「国難」だ】

 安倍晋三首相が掲げた解散理由には7割の人が納得せず、内閣支持率も急落した−−新聞各社の世論調査が示すように、安倍政権の戦略はうまくいっていない。政権の延命だけが目的であることが見透かされている。安倍は「国難突破解散」と言うけれど、こんな嘘つきが総理大臣を続けていること自体が「国難」なのである。

消費税が「大義」?

 衆院解散の意向を正式に表明した記者会見(9/25)で、安倍首相は「少子高齢化と北朝鮮情勢」を「国難」と規定し、その対応について国民に信を問いたいと訴えた。名付けて「国難突破解散」。だが、解散理由の説明はデタラメきわまるものであった。

 まずは消費増税分の使い道変更だ。2019年10月に消費税率を10%に引き上げる既定方針は変えないが、増収分は国の借金返済ではなく、子育て支援や教育無償化などの財源にあてるという。社会保障制度を「全世代型」に転換する、との考えも示した。

 「何か変だな」と感じたあなた、その直感は正しい。消費税率を8%に引き上げた2014年、政府広報は「引き上げ分は、全額、社会保障の充実と安定化に使われます」とPRしていた。この約束を破り、増収分8兆2千億円の約8割を借金返済に使ったのは安倍政権である。



 それなのに、安倍はぬけぬけと「消費税の使い道を見直す以上、国民に信を問わねばならない」と語り、衆院解散の理由とした。厚顔無恥というほかない。大体、子育て支援の拡充や教育無償化は消費税を上げなくても十分できる。安倍軍拡をやめるだけでいいのである。

 たとえば、福島みずほ参院議員(社民党)の求めに応じて文部科学省が提出した資料によると、公立私立の高校授業料無償化に必要な予算は3297億円だという。膨張し続ける軍事費(防衛費)を第2次安倍政権発足前の2012年度の水準に戻すだけで5413億円の財源が生まれる。軍事費を削れば簡単にできることなのだ。

「全世代型」のまやかし

 「全世代型」社会保障制度への転換もうさんくさい。日本経済新聞が行ったインタビュー(9/12)の中で、安倍は「高齢者中心の社会保障制度を是正」すると述べている。要するに、高齢者を切り捨て、年金給付額をさらに減らすということだ。

 御用メディアは「日本の社会保障制度は高齢者偏重」だと指摘する。まるで高齢者が優遇されているかのような印象を与える物言いだが、事実は違う。立命館大学の唐鎌(からかま)直義教授の調査によると、65歳以上の高齢者がいる世帯の貧困率は2016年時点で27%に達している(09年調査時と比較すると2・3ポイントの増加)。1人世帯の貧困率はさらに高く、女性単身世帯は56・2%、男性単身世帯は36・3%だった。

 高齢世帯の4分の1が貧困、独居女性では2人に1人が生活保護水準未満…。この惨状を招いた原因が公的年金給付の引き下げにあることは明らかだ。唐鎌教授は「子どもだけではなく高齢者の貧困も深刻。…これ以上の年金引き下げはやめるべきだ」と強調する(9/15西日本新聞)。

 当然の指摘だが、安倍政権が聞く耳を持っているとは思えない。連中の本音は「働けなくなった老人はさっさと死ね」だからである。

「北朝鮮」だけが頼り

 安倍は解散表明会見で「アベノミクスの成果」を列挙してみせた。「4年連続の賃金アップ」「200万人近い雇用増」等々。だが、ドヤ顔で「内需主導の力強い経済成長が実現しています」と言われても、ほとんどの人は実感などないのではないか。

 アベノミクスの開始以来、労働者の実質賃金は下がり続けている。国税庁「民間給与実態統計調査」をみてみよう。2012年の408万円を基準にすると、13年はマイナス4万円(404万円)、14年はマイナス15万円(393万円)、15年はマイナス19万円(389万円)、16年はマイナス16万円(392万円)。4年間で54万円もの減収だ。

 使えるお金が減れば消費も減る。1世帯当たりの消費支出は15か月連続してマイナスを記録した。アベノミクスは史上最悪の消費不況をもたらしたのである。企業の内部留保と経常利益は過去最高を記録したが、人びとの暮らし向きは悪化した。これがアベノミクスの現実だ。

   *  *  *

 朝日新聞の世論調査(9/26、9/27実施)によると、安倍首相が述べた解散理由に「納得しない」とする回答が70%に達した(「納得する」は18%)。内閣支持率も下落に転じた。安倍御用紙筆頭の読売新聞の調査(9/28、9/29実施)でも、前回調査より7ポイント低い43%で、「不支持」46%に逆転された。

 こうなると、安倍自民党は「北朝鮮問題」にすがるしかない。自民党幹部は次のような「期待」をふくらませているという。「国民に北朝鮮問題を問い、『国を守れるのは自民党だ』と訴える。もしその期間にミサイルが発射されたら、『やっぱり自民党だ』『自民党頑張れ』ってなるんじゃないか」(9/28朝日)。「Jアラート効果よ、いま一度」というわけだ。

 対話を「無駄骨」と決めつけ、制裁強化を声高に叫ぶ安倍晋三。米・朝の戦争挑発合戦をいさめるどころか、煽り続けている。偶発的な軍事衝突が発生してもおかしくない事態を引き寄せているのは安倍政権なのだ。生活破壊と戦争の危機をもたらした5年間のアベ政治。その継続を許してはならない。   (M)

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