2017年10月27日 1499号

【軍事緊張をあおる改憲勢力/南西諸島を軍事拠点化/沖縄の運動と市民共闘でSTOP】

「危機」自作し実質改憲

 衆院選の争点となった9条改憲。戦争法・共謀罪法を強行した安倍は、朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の核開発・ミサイル発射を最大限に利用し、世界の対話の流れに逆行する強硬姿勢で国民の不安をあおり「国難」を強調して集票に利用した。自ら戦争の危機を高めながら「国民を守る自衛隊の存在を憲法に書き込む」という。

 小池新党・希望の党は「9条も含めて改憲論議を進める」とした。小池は2000年、衆院憲法審査会で憲法停止を主張。今回の衆院選では「リアルな安全保障が必要だ」と繰り返した。その「リアル」は、日本政府が自ら生み出した緊張激化の結果だ。双方ともにマッチポンプだ。

 希望の党結成で、改憲を阻む市民・野党共闘は一時混乱した。小選挙区での与野党一騎打ちの構図に希望が割って入った。だが、改憲阻止・戦争法反対を掲げ前進してきた市民は分断を許さず、すぐさま野党共闘を再構築・強化した。「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」は立憲民主、共産、社民に9条改憲反対、戦争法・共謀罪白紙撤回、原発ゼロを求め、候補者一本化を加速させた。

自衛隊南西シフト

 グローバル資本による戦争と貧困の新自由主義政策との対決が、今強化すべき市民・野党共闘の課題だ。それは将来の明文改憲だけではなく、すでに進められている実質改憲・際限のない軍拡政策の阻止だ。防衛省は2018年度政府予算概算要求で過去最大の5兆2551億円を計上した。増加分の多くが「島嶼(とうしょ)防衛」と「朝鮮核・ミサイル」を口実としたものだ。

 「島嶼防衛」の名で行われているのが自衛隊の南西シフトだ。

 九州を起点に琉球諸島最西端の与那国島に至るまでの南西諸島に、兵器と部隊を大量に送り込む。

 佐賀空港には13機のオスプレイを配備。佐世保に水陸機動団3000人を駐屯させる。

 陸上自衛隊地対艦ミサイル部隊、地対空ミサイル部隊は奄美大島に550人、宮古島に800人、石垣島に600人。航空自衛隊移動警戒隊は奄美大島、与那国島に各50人。これら戦闘部隊のほかに、奄美大島・石垣島・宮古島に建設されるレーダーサイトでの監視部隊や警備部隊を含めて、約1万人規模となる予定だ。

立ちはだかる反対運動

 これら南西諸島シフトは、ことごとく地元市民の反対運動にあっている。

 陸上自衛隊のミサイル基地が建設されようとしている石垣市(石垣島)では、基地建設の是非を問う住民投票条例制定が請求された。市議会で否決されたものの「石垣島に軍事基地を作らせない市民連絡会」は市有地を基地に提供させないことを求める署名運動を開始。18歳以上を対象としたこの署名は9月19日、1万4022人分が中山義隆市長に直接手渡された。石垣市の有権者3万8501人の36%を占め、さらに署名運動は続いている。

 ミサイル部隊配備が画策されている宮古島へは18年度概算要求で260億円が計上され、18年度中の警備部隊380人の配備が狙われている。

 駐屯地の候補地は経営難に陥った千代田カントリークラブで、隊舎建設に92億2千万円、宿舎整備に49億8千万円、候補地未定の弾薬庫整備に117億円という巨費が計上されている。水源から1qの位置にあるにもかかわらず、同カントリークラブの使用は、下地俊彦市長が防衛省に持ち掛けた。宮古島には大きな川がなく、水道の供給源は地下水に負うところが大きい。地元の市民団体らは「基地建設後に起こりうる地下水汚染、基地が攻撃されたときの被害」などを懸念し用地調査に抗議声明などを出した。10月22日投開票の宮古島市議選では「命の水を守ろう」「ミサイル基地のない平和な島を」を掲げ石嶺かおり市議が再選をめざし立候補している。

「決定権は私たちに」

 宮古島新基地建設に反対するてぃだぬふぁ島の子の平和な未来をつくる会≠フ楚南有香子共同代表は4月、大阪、横浜で開かれたZENKO主催の集会で「防衛白書や防衛大綱を誰が決めたか。閣議決定だ。国民的な議論がないまま、オスプレイも南西諸島配備も決まってしまっている。武力か外交努力か、5兆円の軍事費か福祉・教育か。私たちに決定する権利がある」と訴えた。

 決めるのは市民だ。

 自衛隊南西シフトと対決する沖縄の運動と市民共闘の力が、改憲勢力の戦争政策にストップをかける。

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