2017年10月27日 1499号

【みる…よむ…サナテレビ(458)2017年10月14日配信 イラク平和テレビ局in Japan ヘアスタイルで殺されるイラクの若者】

 イラクでは今、若者の服装やヘアスタイルに攻撃が加えられている。正体不明の私兵によって若者が殺害される事件さえ起こっている。2017年8月、サナテレビはバグダッドの街頭でこの問題について若者から率直な意見を聞いた。

 番組冒頭、バグダッドの町の風景が映し出される。若者にはジーンズやTシャツ姿も多いし、ヘアスタイルも欧米や日本と変わらない。日本では、イラクなど中東諸国はムスリム(イスラム教徒)が多く服装もイスラムの「教え」に厳格に従っているのでは、と思われているが、決してそうではない。

 ところが2003年の米軍によるイラク占領後、歴代イラク政府はイスラム主義による政治支配を強めてきた。大学でも、イスラム教の授業が強要され若者のヘアスタイルや服装にまで干渉が強まっている。自由なヘアスタイルや服装をしているだけで、若者が殺されているのだ。IS(「イスラム国」)などスンニ派も、イラクでは多数派のシーア派も、服装を口実に私兵を使って平気で市民を殺す事件を起こしている。

 インタビューでは、こんなイラクの人権状況に市民が怒りの声をあげる。ある市民は「若者がヘアスタイルや服装を選ぶのは自由を表明したいからだ。治安当局はこんな若者を守らなければならない」と主張する。全くその通りだ。

 アバディ政権はこうした基本的な人権さえ市民に保障しない。むしろ人権侵害を放置している。インタビュアーのサジャド・サリームさんも「反動勢力が支配権を握り続けるようにしたいため」とその狙いを指摘する。アバディ政権自身、シーア派のイスラム政治勢力を最大の基盤にしている。支配権力にとって宗教を口実にした市民の支配は都合がいいのだ。

 バグダッドの市民は訴える。「外見やヘアスタイル、ファッションに関心を持つのは個人の問題で、個人の自由だ」。サナテレビは、宗教を利用した支配に対する人びとの怒りを伝え、反対の声を上げようと訴えている。

 安倍政権が憲法改悪で人権の抑圧を狙っている今、これは日本の私たち自身の問題でもあると言える。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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