2017年11月17日 1502号

【トランプ接待外交のてん末/はしゃいだあげく、武器を買う安倍/戦争挑発をどこまでも支持】

 巨額の税金を使った政治ショーだったトランプ米大統領の来日。安倍晋三首相は「日米同盟の揺るぎない絆を世界に示すことができた」「北朝鮮への圧力を最大限高めていくことで完全一致した」と胸を張る。しかし、トランプ流の戦争挑発路線は世界中から批判されている。「100%の支持」を表明しているは安倍首相だけなのだ。

蜜月関係を演出

 「日米同盟をより偉大に」と刺しゅうされた帽子をプレゼント。共通の趣味であるゴルフを楽しんだ後は銀座の高級鉄板料理店でおもてなし…。一連のトランプ来日イベントでは日米首脳の「たぐいまれなトモダチ関係」がこれでもかと演出された。

 安倍とトランプが頻繁に連絡を取り合う関係なのは事実である。大統領就任後、日米首脳会談は今回で5回目、電話会談は公表されているだけで16回と異例の多さだ。衆院選翌日の10月23日にはトランプから電話があり、「大勝利、おめでとう。強いリーダーが国民から強い支持を得たことは非常に重要なことだ」と祝福されたという。

 米国大統領にここまで信頼された日本の総理は初めて。米国の政治学者も「アメリカには安倍晋三が必要だ」と言った−−日本のメディアはこのような提灯記事を連発している。産経新聞によれば、中国の威嚇に屈しなかった安倍の姿勢や経験をトランプは模範にしているのだという(ホントかよ)。

 朝日新聞も米政府関係者の声として「大統領は、側近にも言わないことを安倍首相に相談することもある」と報じた(11/3)。記事によれば、朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)がミサイル発射や核実験を行うたびに、トランプから「シンゾー、どう思う?」と意見を求めてくるらしい。

 トランプはなぜ安倍の言葉を欲しているのか。理由は簡単。稚拙で危険な朝鮮への対応を「一貫して支持する」とし、「必要なのは対話ではなく圧力だ」と援護してくれるのは安倍ぐらいしかいない。トランプにしてみれば、いつでも応援してくれるチアガール的存在なのだろう。

孤立するトランプ流

 日本は例外中の例外で、トランプ流の好戦的外交は世界各国でもアメリカ本国でも支持されていない。米紙ウォールストリート・ジャーナル電子版が10月29日に発表した世論調査によると、トランプの「北朝鮮政策」を「支持しない」との回答が51%に達し、「支持する」34%を上回った。トランプ自身の支持率も大統領就任後最低の38%に下落した(不支持は58%)。

 政権内部にも亀裂が走っている。トランプ政権誕生の立役者だったスティーブン・バノンが首席戦略官兼大統領上級顧問を更迭された。朝鮮半島情勢について「軍事的解決などない。忘れてしまえ。開戦30分でソウルの1000万人が通常兵器で死亡するという難題を一部でも解決しない限り、お話にならない」と語ったことが、トランプの逆鱗に触れたのだという。

 保守系ニュースサイトの主宰者で、フェイクニュースの発信源となってきたバノンだが、この発言はフェイクではない。米議会調査報告局は、朝鮮戦争が起きれば核攻撃なしでも最大30万人が死亡すると予測した報告書をまとめた。核兵器が使用されたなら、被害は何十倍にも拡大する。

 「核戦争につながる軍事的衝突の回避」は世界各国の共通認識となっている。最近では、フィリピンのドゥテルテ大統領が「核戦争を受け入れることはできない」と明言。金正恩・朝鮮労働党委員長に言及し、「誰かが彼と話さなければいけない。日米韓こそが彼を説得できると考えている」と語った(10/29)。

 ドゥテルテといえば、司法手続きを無視して犯罪容疑者を殺害するなど、「人道に対する罪」で世界中から非難されている人物だ。そんな人権無視男ですら「対話による解決」を主張しているのに、わが日本の首相は「対話より圧力」の一点張り。国際的恥さらしとしか言いようがない。

武器輸入拡大を約束

 「非常に重要なのは、日本が膨大な兵器を追加で買うことだ」「米国に雇用、日本に安全をもたらす」。首脳会談後の共同会見でトランプはこう強調した。戦争を煽って武器を売りつける−−まさに軍産複合体ビジネスだ。極東の一角で軍事衝突が起きても構わない。米共和党のグラム上院議員によれば、トランプは「戦争が起きるなら向こうでやる。大勢が死ぬが、米国ではなく向こう側で死ぬ」と話していたという。

 そんなトランプの武器購入要求に安倍は即座に応じた。さらに「北朝鮮の弾道ミサイル」について、「必要あるものについては迎撃する」と明言した。この男も「戦争になってもいい」と思っている。「武力行使を既成事実化すれば改憲を進めやすい」程度の認識なのだろう。

 己の利益のために戦争の危機を煽り、民衆の命と安全を脅かしている−−この点においてトランプも安倍も金正恩も同じだ。まとめて「平和の敵」と認定したい。 (M)



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