2018年01月05・12日 1509号

【沖縄 ヘリ飛行再開強行とヘイト 山城裁判、名護市長選勝利へ】

 「この地域には何が落ちてくるか分からない」。世界一危険と言われる宜野湾(ぎのわん)市普天間飛行場周辺で、12月7日緑ヶ丘保育園、13日には普天間第二小学校と相次いだ米軍ヘリ部品落下事故にいまだ衝撃と恐怖の只中の地元住民。その住民の怒りと不安をさらにかきたてる許しがたい出来事が立て続けに起こった。

6日後に飛行再開強行

 一つは、事故を起こしたヘリと同型、大型輸送ヘリCH53Eの飛行再開強行だ。

 事故直後、沖縄県、宜野湾市などは全機飛行停止を要求。また、「最大限、学校の上を飛ばない」とした在沖米海兵隊幹部ダリン・クラーク大佐に、普天間第二小の喜屋武悦子校長は「645人の子どもの命を預かっている校長としては『最大限』では納得できない。もう飛ばないという回答でなければ、保護者にも説明できない」と訴えていた。

 米軍は、ヘリ窓を落下させた事故原因を「人的ミス」と発表したが、今年10月東村(ひがしそん)高江での米軍ヘリ墜落事故でも同様に「人的ミス」として「再発防止の徹底」を掲げていたばかり。これほど繰り返し事故を起こして「再発防止」を掲げても、地元住民は誰ひとり信じない。

 同小学校に子どもを通わせる母親は「もう一切飛ばないで。『最大限』なんて、あいまいな約束をするから事故が繰り返される。人為的ミスだから機体に問題はないと言われても納得できない。ミスをした人たちが飛ばすのでしょう」と訴えた。

 飛行停止を求める保護者や学校関係者の悲痛な訴えを封じるかのように、事故のわずか6日後12月19日に米軍は飛行再開を強行。この飛行再開を防衛省が容認したことに、翁長雄志(おながたけし)知事は「日本政府には当事者能力がない。これで飛べば防衛省が責任を取らないといけないのではないか」と厳しく指摘した。

卑劣なヘイト攻撃

 二つ目は、事故のあった保育園や小学校等に対する誹謗中傷、ヘイト攻撃だ。

 緑ヶ丘保育園には、米軍ヘリの部品落下を「自作自演だろう」とする嫌がらせ電話やメールが十数件寄せられ、普天間第二小や市教育委員会にも「やらせだろ」「基地のおかげで経済発展しているじゃないか」「なんでこんな場所に学校をつくったのか」など誹謗中傷の電話は約30件に上る。事故の衝撃に加え、さらに精神的な苦痛を与える許されざる行為だ。米軍自身が部品落下を認めているにもかかわらず悪質な攻撃。翁長知事も「目の前で落ちて、誰がどう見ても明らかなものにも『自作自演』と来ること自体今までにない社会現象。基地問題だけでなく、弱者に向かっているような傾向が日本国全体にもある」とヘイト攻撃の広がりを危惧した。

 事故後、緑ヶ丘保育園の父母らは県に嘆願書を出し、飛行停止の署名活動も。大学教員ら117人が普天間閉鎖を求める声明を発した。12月29日には宜野湾市役所前で教育関係団体が飛行停止などを求める市民集会を開催する。

 軍事優先で命を軽んじる日米両政府に地元住民の怒りは頂点に達している。


山城さんら裁判結審

 東村高江でのヘリパッド建設反対運動で不当弾圧をうけた沖縄平和運動センター山城博治議長ら3人の公判が12月20日、那覇地裁であった。城岳(じょうがく)公園の事前集会では、当事者の山城さんが「私たちに対するいわれのない弾圧、今それを跳ねのけないとまた弾圧が襲い掛かってくる。絶対に負けられない」、稲葉博さんも「裁かれるのは日本政府」と決意。約180人が「無罪を勝ち取るため、団結ガンバロー」と激励した。

 公判で、弁護側は訴追は運動弾圧に当たると裁判そのものの不当性を主張。山城議長は「問われるべきは政府の差別的政策だ」と意見を述べ、結審した。判決は3月14日に言い渡される。山城さんらの堂々とした意見陳述に、傍聴した上間芳子さんは「これは絶対に有罪にできない」と無罪判決に自信を見せた。3月の判決までに公正判決を求める30万人署名を実施する。

名護市民投票から20年

 名護市辺野古キャンプ・シュワブゲート前では、最近は工事車両などの出入りが1日200台を超える時もある。沖縄防衛局は12月15日、北部の本部港で石材を海上輸送する作業に着手し、翌16日に強行した。21日にも2回目の搬送が実施された。だが、海上搬送はむしろ手間がかかり、「作業効率の向上」の名分は全くのまやかしで県民の諦めを誘うための「印象操作」でしかない、と土木技術者の北上田毅さんは指摘する。

 1997年の名護市民投票から20年。12月26日、ヘリ基地反対協議会は辺野古ゲート前で「辺野古座り込み5000日集会」を行う。2月4日名護市長選挙とともに、新基地阻止へ、絶対に負けられない新しい年を迎える。 (A)



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