2018年01月05・12日 1509号

【山形原発避難者への裁判をやめよ 住宅追い出し反対署名1万筆を提出】

 山形県に避難した原発事故避難者の住宅強制立ち退きに反対する緊急署名が1か月で1万978筆集まった。

 立ち退き裁判の口頭弁論は11月21日に山形地裁で始まり、次回は1月12日に決まっている。訴訟の取り下げと話し合いによる解決、区域外避難者の住宅確保を求め、短期間のうちに全国から寄せられた署名。数もさることながら、署名集めに避難当事者自身が携わった意義も深い。すでに公営住宅に移った区域外避難者は「自分さえよければいいというものではない」と、避難指示解除区域からの避難者は「明日はわが身」と、避難先で知り合いに声をかけて集めた。福島県に帰還した人も、「帰還強要になる」と福島在住者に呼びかけた。

 署名は12月21日、参院議員会館で厚生労働大臣と復興大臣あてに提出された。立ち会った立憲民主党の菅直人衆院議員は「原告の独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構は(被告とされた避難者の)住宅を民間事業者に売り出しておきながら、一方で当事者になって訴える権限があるのか」と追及。対応した国土交通省職員は「契約先(ファースト信託)も原告として加わると聞いている」と、訴訟手続きすらいい加減なまま見切り発車で追い出しにかかった無様(ぶざま)な姿勢を露呈した。「そもそも避難者が住んでいるのに追い出しを強行するのは許されないこと。国として支援機構をきっちり指導せよ」との求めには、「指導する立場にはないが、助言はできる」。外郭団体に対する国の無責任な管理の実態が浮き彫りになった。

 提出後の記者会見で、被告とされた8世帯の一人、武田徹さんが訴えた。「お父さんたちは山形から福島市への通勤で毎朝5時に出て夜8時頃帰ってくる。子どもと接し相談する時間さえなくストレスがひどい。子どもたちは甲状腺検診でA2判定がほとんど。風邪をひきやすくなった。入居者は小さな子どもを抱え、『せめて小学校・中学校を卒業するまで』と生活設計を立てていたが無視され、一律に住宅提供が打ち切られた。国家がわずか8世帯を訴えるようなことは、異常でありえないことだ。提訴は、裁判長もおかしいと思うほど手続きに無理がある。機構はとりあえず取り下げるべきではないか」

国連人権理事会も注目

 田村市から都内に避難した原発避難者住宅裁判を準備する会の熊本美彌子さん。「原発事故のような長期にわたる災害対策・住宅対策の法律がなく、現状では区域外避難者への損害賠償もほとんどない。生活費の負担増に悩む世帯がたくさんあることを考えてもらいたい。避難先の自治体がこれを前例にして追い出しの動きを強めるのではないかと心配している。山形の訴訟は他人事ではないと署名に取り組んできた。緊急だが1万筆を超え、うれしい」とエールを送った。郡山市から川崎市に避難した避難の協同センター共同代表の松本徳子さんは「政府は私たちに『いつまで自立しないでいるんだ』と言うが、逆に『いつまで私たちをこんな状況においているんだ』と言いたい。国連人権理事会でも区域外避難者への日本政府の対応が問題にされている。裁判は加害者の側が起こしたもので、私たちが起こしたくて起こしたのではない。1万を超える署名が集まって感謝している」と話した。

 署名の最終締め切りは1月10日。次回は福島県知事に提出される。ネット署名も受け付けている。

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