2018年01月05・12日 1509号

【残業代未払い・長時間労働シンポジウム/運輸労働者は過労死対象外!?/8時間働けば暮らせる社会へ】

 厚生労働省の「過労死等防止対策白書」によると、2010年から15年の間に脳・心臓疾患で労災認定を受けたのは「運輸業・郵便業」が464件と全産業中最多で、全体の約3分の1を占めた。運輸業界でいかに長時間労働が深刻化しているかを物語る。

 ところが、政府が通常国会に提出しようとしている「働き方改革関連法案」は、年720時間の残業上限の適用を運輸業に関しては「環境整備に一定の時間を要する」として5年先送りした上、猶予期間終了後も例外的に年960時間まで残業を認める。日本労働弁護団は「長時間労働による過労死・精神疾患の多い業種にもかかわらず上限規制の例外を設けるのは、労働者の命と健康を軽視するもの」と厳しく批判している。

 「残業規制の対象外」とされた「働かされ方」の実態をタクシーやトラックなどの労働の現場から明らかにし、誰もが安心して働ける社会の実現に向けた共同行動をつくり出す契機にしようと12月10日、都内で「残業代未払い・長時間労働を考えるシンポジウム」が開かれた。首都圏なかまユニオンや全国際自動車労働組合(国際全労)などが呼びかけた。

立ち上がった組合

 コーディネーターは、国際全労の残業代請求訴訟で代理人を務める指宿(いぶすき)昭一弁護士。シンポジウムの意義について「裁判に勝って残業代を払わせるだけでなく、8時間働けば暮らせる労働条件をかちとっていく必要がある。大きな組合は残業代ゼロの賃金制度の問題に取り組んでこなかった。少数派であっても立ち上がった組合がきょう、垣根を越えて集まったことは一つのスタートになる」と語る。

 報告は5つの職場から。

 国際自動車では、給与明細に残業代が記載されているが同じ金額を歩合給から差し引くため、何時間働いても賃金総額が変わらない。国際全労の伊藤博委員長は「残業代をきちんと払うのは当たり前。それができないのが今の会社経営者。最高裁から東京高裁に差し戻された1次訴訟がもうすぐ結審する。とことん闘っていく。世の中を少しでも変えられれば」と話した。

 アート引越センターでは月100時間、繁忙期は200時間もの残業を強いられている。過去2年で1人50万円前後の不払い残業があることが分かり、横浜地裁に提訴した。引っ越し事故の賠償金が給料から天引きされ、支給額「−1000円」の給与明細を渡された例も。

 トールエクスプレスジャパン(旧フットワーク便)では終業後3時間かけて集荷しても1500〜2000円、時給500〜700円にしかならない。拒否闘争に入ると、会社は報復として当該労働者の担当業務における残業を禁止。月10万円近く収入が減った人もいる。

 ヤマト運輸の下請け会社、ナカムラプロジェクトは、朝5時半から夜10時まで働くトラック運転手が日給1万円。「輸送業請負契約書」に無理やり署名させ、労働者ではなく請負だからと残業代を払わない。契約書への署名を拒否した正社員は懲戒解雇。ヤマト運輸の「働き方改革」は下請けには及んでいない。

 ジャパンビバレッジは自動販売機の飲料の補充・運搬を行う。10時間以上かけて自販機を回ることもあるが、賃金は定額働かせ放題の「事業場外みなし労働時間制度」を適用しているため7時間45分間分だけ。若い労働者が組合に加入し、同制度は無効として団体交渉で残業代の支払いを求めている。

当事者を地域で包む

 討論の中では、父親を過労死で亡くした大学生が「会社は残業代を1円も払っていなかった。『本人の責任』と労災認定に協力せず、謝罪も説明も一切ない。過労死がなくなる契機にと裁判を起こした」と発言。指宿弁護士は「残業代不払いはお金の問題ではなく命の問題。法律面の闘いも必要だが、長時間労働の規制は現場の闘いがないと実現できない」と指摘する。

 首都圏なかまユニオンの伴幸生(さちお)委員長からは、雇用共同アクションが取り組む「過労死と職場における差別の根絶を求める国会請願署名」と合わせて「当事者が声を上げ、それを地域から包み込む。労働局など行政に対する要請、地域での宣伝行動を強めよう」と行動提起があった。

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