2018年01月26日 1511号

【大企業のための2018年度税制大綱/法人税率は実質20%/優遇税制は全廃を】

肥え太る大企業と株主

 12月22日、安倍政権は通常国会での税制改定法案の基になる2018年度税制大綱を閣議決定した。「目玉」は法人税の実質負担を20%に引き下げるというものだ。

 国内雇用者の平均給与を3%(中小企業は1・5%)以上増額した企業は、増額給与総額の15%を法人税から減額する。加えて従業員への教育訓練費の増加が20%以上であれば、増額給与総額の20%を減額する。減額の上限は、本来納めるべき法人税の20%だ。

 情報連携利活用設備(いわゆるIoT[機械等モノのインターネット制御]など)に5000万円以上投資した法人には同じく20%を上限として減額する。

 これらに研究・開発費に関する減税(上限は40%)を組み合わせれば、法人税は8割引きの減税となる。

 最大の恩恵を得るのは、大企業と株主だ。

 賃上げ・設備投資ができる余力がある企業でなければ恩恵は得られない。大企業ほど減税効果が大きくなる。

 法人税は益金(収益―費用〈人件費など〉)に課税される。この税引き後の利益や前会計年度の内部留保が配当や新たな内部留保の原資となる。つまり、法人減税は、本来徴収すべき税金を株主へのカネと企業の蓄財に回す行為だ。

 国内企業の海外展開の理由は、海外の巨大市場への参入であり、安い人件費だ。「法人税が高いから」ではない。法人税減税は不要。大企業を潤す各種の減税措置撤廃こそが必要だ。

配当でぼろ儲け

 強化すべきは、大企業の法人税だ。とりわけ、配当金に対する優遇措置は直ちに廃止すべきだ。

 海外で荒稼ぎするグローバル資本には、政府が税逃れを準備している。

 その一つが、外国子会社配当益金不算入制度だ。株式を25%以上保有する子会社から国内の親会社が配当金として得た収入は、その95%が課税対象とはならない。

 また、受取配当等の益金不算入制度も大企業とりわけ持ち株会社を有利にしている。 この制度を適用すれば、持株割合100%の完全子会社からの配当金はその全額が、持ち株割合3分の1超の子会社からの配当金の50%が、課税対象から外される。

 ソフトバンクやYahoo!Japanを傘下に従える持株会社、ソフトバンクグループは税引き前純利益788億円に対して500万円(0・006%)しか払っていない。(『税金を払わない巨大企業』富岡幸雄著・文藝春秋)。2013年の数字で法定税率38・01%の時代だ。

 このようなことが起こるのは、ソフトバンクグループが持株会社だからだ。持株会社の利益は、子会社の税引き後純利益からの株式配当だ。「法人税はすでに子会社が払っているから、株式配当に課税すると2重課税となる」というのが受取配当等の益金不算入の理由の一つだ。個人への配当金に対しては一律20%課税されている。法人に課税しない理由はない。

 税の大原則は、税負担能力に応じて課税することであり、累進課税の根拠となる。十分に負担能力がある大企業には相応の税負担を求めるのが筋だ。税制改革大綱では「金持ち増税」と称して年収850万円以上の給与所得者を増税というが、想定する税収増額は850億円にすぎない。

 『税金を払わない巨大企業』に列挙された上位4社に現在の法定税率で課税するだけでもその2倍超の税収が確保できる。

 株式配当は本業からの営業利益ではなく、営業外利益だ。本業の赤字を営業外利益で埋める会社も多々ある。

 1990年代初頭の土地・証券バブル時、本業そっちのけで土地・株式投資=営業外利益をむさぼった多くの企業がバブル崩壊で経営難に陥った。その結果、倒産や大量首切りで失業者はあふれ、就職氷河期を作り出した。2007年リーマンショックも、企業のマネーゲームが元凶だ。

 産業構造の正常化のためにも、本来政府が営業外利益への課税を強化すべきだ。持株会社も例外ではない。

 その他にも、「外国税額控除」「試験研究費税額控除」など多くの優遇税制によって、法定税率25・5%の12年度で資本金100億円超の単体及び連結法人の実際の税率は11・54%にすぎない。


必要な応分の課税強化

 大企業優遇税制の恩恵は、そのまま、日本の超大富豪の利益となる。

 ソフトバンクグループの孫正義会長は日本一の資産家だ。その収入源は役員報酬と自社株式配当だが、役員報酬は1億3千万円。一方でソフトバンクグループからの配当金だけでも100億円を超えている(2016年)。巨額の株式配当の原資は、法人への「株式配当等益金不算入」がもたらしたものであり、その結果孫会長に支払われた巨額の配当金への課税は、一律20%と著しく低い。大企業優遇税制が大企業と大株主に巨万の富をもたらし、不労所得である大株主の株式配当への課税も負担能力に対して極端に小さい。

 大企業・富裕層減税と大衆増税が富の偏在と生活破壊を生み出している。いびつな税制を税負担能力に応じたまともな税制に戻すだけで、中間層への所得税増税はもちろん、何より消費税増税も必要ない。
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