2018年01月26日 1511号

【「弱者の味方」掲げる企業が退職強要/サービス付き高齢者住宅の保育士 配転無効求め労働審判】

 大阪近郊都市を中心にデイサービスなどの介護事業を行う(株)アットホーム(本社、大阪府高槻市)が従業員用保育室の保育士として正社員採用した二人に「生活サポートスタッフ(掃除・洗濯の雑用係)への配転か退職か」を迫る事件が起きた。保育の仕事を続けたいIさんとSさんは労働審判を申し立て、第1回審理が1月11日、大阪地裁で行われた。同日、報告集会があった。

嫌がらせくりかえす

 IさんとSさんは、池田市にあるサービス付き高齢者向け住宅「ナースステーションさくら」で従業員用保育室で勤務していた。17年8月、保育室閉鎖の通告と他職種への配転を命じられた。二人は、保育室再開時には戻れるのかと確認を求めたが、会社は「今後保育に入ってもらうことはない」とし、配転に応じなければ会社都合退職との選択を突きつけた。

 納得できない二人は、なかまユニオンに加盟し団体交渉を求めた。会社はすぐには応じず、保育室からの締め出しなどの嫌がらせを加えてきた。適応障害と診断されるなど、二人への精神的圧迫が続いた。労働審判では、保育士として職種限定の雇用契約であり、異職種への配転命令は無効、応じる義務はないことの確認と会社の不法行為による損害賠償を求めている。

 報告集会で「会社側の思惑は」との質問に、代理人の普門大輔弁護士は「不足する介護職員募集のため、保育室ありの看板がほしかっただけではないか」と推し量った。二人は安全な保育運営のため、手洗い場の設置など施設改善を求めていた。こうした要求を会社は「無い物ねだり」(会社答弁書)と受け止めていた。二人への嫌がらせはそんなころから始まっていた。

みんなの支援が大きな支え

 (株)アットホームは「社会的弱者の味方」を掲げ、労働組合や市民運動との交流もある。そんな中での退職強要だった。なかまユニオンは、本社の目と鼻の先にある公園で1月6日、もちつき大会を開催。近隣住民の参加を得、支援を広げた。地域の労組18団体が抗議FAXを送ってくれた。

 Sさんは「二人きりの小さな舟だったが、今では大きな船をみんなが漕いでくれる。大きな支えになっている」、Iさんは「命令は間違いだったと会社に謝罪させたい。保育士として働きたいと訴え、逃げることなく頑張っていきたい」と思いを語った。

 なかまユニオンは早期解決をめざし、駅頭宣伝とともに1月24日社前集会、2月3日大宣伝行動を予定している。労働審判の第2回期日は2月2日だ。

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