2018年01月26日 1511号

【ショボ目ときどきギョロ目(5)涙くんサヨナラ〜なのだが】

 記録的な豪雪に苦しんでいる皆さんには、申し訳ないような青空。日向ぼっこをする盟友・原発難猫ロックにつられて借家のベランダに出る。またまた、思わぬ鼻歌である。

 涙くんさよなら さよなら 涙くん また会う日まで〜

 原発事故に追われて横浜に避難して、翌年か翌々年ごろからだった。左眼に涙模様が張り付いて消えない。右眼を閉じて月を見ると、二つだ。「月が二つに見えるから〜 遠回りして帰ろ」とか笑い飛ばしていたけれど、なんともうっとうしい。随分泣いたからなぁ、などと言い訳しながら眼科に寄ると、「あぁ、白内障ですよ」と、あっさり。

 晴れて「後期高齢者」の仲間入りをした昨年暮れ、記念に、と手術をしてもらった。翌日眼帯を外すと、なんと、本当に消えていたのだ。あぁ、すっきり。

 年が明けて一月十二日、避難者住宅追い出し訴訟の口頭弁論で山形に向かった。新幹線の窓から見える雪景色がまぶしい。

 法廷では、滋賀県から駆けつけた井戸謙一弁護士が、「住宅は福島県が雇用促進機構から一括して借り上げている」と、内堀雅雄知事の公印が押されている文書を基に追及。機構や信託会社が立ち退き請求をしている訴訟の根幹の矛盾を指摘。海渡雄一弁護士は、「国連人権理事会でも勧告が出ている国際的な人権問題だ」と強調した。「被告」とされている武田徹さんは、緊急事態宣言が続いている福島県内の放射能汚染状況の中で、帰るに帰れない避難世帯の窮状を淡々と訴えた。

 口頭弁論後、裁判所近くの「遊学館」で開かれた報告集会で連帯の挨拶を求められた私は、「最後まで一緒に闘っていく」と言おうとして声が詰まった。武田さんの後ろ姿が眼に入って、涙がボロボロ。隣にいた避難の協同センターの瀬戸大作さんに「また泣いてる」と冷やかされた。

 そうなんです。悔しいんです。七年も経って、被害者がこんな状態に置かれていることが、悔しいんです。安倍一族が詐欺と恐喝で命永らえ、内堀知事が「復興本番」とほざき続ける。それを覆せない。それが悔しいんです。一番よくわかってくれているのが、「涙くん」なんです〜。

 でも、もう溜め込むことはしない。流してやる。この理不尽・非道を…とか、ロックにこっそり。今夜はぎょろ眼だ。

(南相馬市の原発難民 村田弘(ひろむ))

【絵解き】猫は泣かない。でも、怒るぜ。
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