2019年06月07日 1578号

【沖縄基地の空撮を狙い撃ち 改悪ドローン規制法で飛行禁止 命を脅かす汚染と訓練】

空域はほぼすべて禁止

 小型無人機ドローンによる自衛隊施設や在日米軍基地上空の飛行禁止を新たに盛り込んだ「改正」ドローン規制法が5月17日、成立した。6月13日に施行される。防衛省は早速、名護市の辺野古新基地建設工事を進める米軍キャンプ・シュワブの指定に入った。

 指定されれば、施設管理者の同意がなければドローンによる空撮はできない。施設内と外側周囲約300bの上空が規制される。違反すれば、警察官や自衛官にドローンの破壊や捕獲を認め、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される。米軍施設以外の訓練水域・空域も禁止対象に含めたため、沖縄周辺のほとんどの空域でドローンの飛行が禁止される。

 日本新聞協会は5月17日「規制強化は取材活動を大きく制限し、国民の知る権利を著しく侵害するもので、改正案が成立したことは極めて遺憾だ」とコメントを発表した。

 この規制強化に懸念の声があがり、法「改正」で狙い撃ちされた沖縄では、当然、怒りの声が広がっている。

ドローン規制法緊急集会

 土木技術者の奥間政則さんらが中心となって活動する「沖縄ドローンプロジェクト」では、これまでドローンによる空撮と分析によって、東村(ひがしそん)高江や辺野古におけるずさんな基地建設工事の実態を明らかにしてきた。工事内容の問題点を追及することで度々作業を中断させるなど、違法工事を監視する役割を担ってきたが、法が施行されれば、それらの活動もできなくなってしまう。

 5月26日、全国に先駆けて那覇市で「ドローン規制法と沖縄の基地」と題した緊急集会(沖縄ドローンプロジェクト主催)が開催された。

 報告者の奥間政則さんは、辺野古新基地建設の現場で汚濁防止膜の不備による環境破壊が起きている状況など「いくら国がきれいごとを言ってもドローンが実態を暴いている」と空撮でとらえた防衛局の不正工事の実態を紹介。「法の施行を急ぐのは、こうした不都合な実態を覆い隠すためだ」と批判した。

 また、ドローン問題の弁護団結成を呼び掛けた仲松正人弁護士は「禁止区域の指定や施設管理者の同意の基準が明確でない」と恣意的運用の可能性があること、区域指定や不同意に対しても国民の側から不服申し立てができないことなど、「改正」法の問題点を挙げた。知る権利を保障させるための規制法改廃に向け、「世論が盛り上がることが絶対必要」と強調した。

 集会は、防衛省に対し「辺野古新基地地区は禁止区域としないこと、国民の知る権利や報道の自由を制限しないよう改正すること」などを求める決議を採択した。

 6月1日からのZENKOスピーキングツアーでは、奥間さんがさらに豊富な情報を基に詳しく報告する予定だ。

パラシュート降下常態化

 最近、米軍による県民の生命・生活を脅かす事態が相次いでいる。

 一つは、水汚染の問題だ。米軍嘉手納基地や普天間飛行場周辺の河川や湧き水等で、発がん性などのリスクが指摘される有機フッ素化合物PFOS(ピーホス)が高濃度で検出され、深刻な問題となっている。宜野湾市大山の住民を対象に4月に実施された血中濃度検査では、全国平均の4倍の値が検出されたことが判明。PFOSは、1970年代から米軍が使う泡消化剤などに使用され、自然界ではほとんど分解されず、地下水などに蓄積している可能性がある。汚染源として米軍基地が指摘されるが、米軍は県の立ち入り調査を拒んでいる。

 もう一つは、パラシュート降下訓練だ。この訓練は、過去にも県民が巻き添えで死亡した例のある危険な訓練。米軍は5月14日、うるま市の津堅島沖でオスプレイを使った訓練を行い、21日には嘉手納基地で降下訓練を実施した。地元自治体や県は、伊江島補助飛行場に降下訓練を集約するとした日米特別合同委員会(SACO)合意違反として訓練の中止を求めていたが、米軍は強行した。同合意では例外的に伊江島以外で降下訓練を実施できるとするが、例外が常態化している。5月23日、謝花喜一郎副知事が関係機関に抗議した直後、あろうことか岩屋毅防衛相は「(米側の)事情を聞くとやむを得ないと判断した」と容認した。とんでもないことだ。

 沖縄の日常では、常に米軍―軍事が優先され、命と生活はないがしろにされてきた。トランプ大統領をゴルフと相撲で接待漬け≠ノした安倍政権。「日米同盟強化」は語っても、沖縄基地の実相には触れることさえなかった。

 玉城デニー沖縄県知事は、2月の県民投票結果をふまえ、沖縄の民意を伝える全国キャラバンを6月11日から開始する。沖縄の思いを全国の市民と共有し、安倍政権打倒につなげたい。    (A)

 

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