2019年06月07日 1578号

【「君が代」不起立共同裁判一部勝訴 維新大阪府政下の初の処分取り消し 条例の違憲性は回避 7人全員上告へ】

 「控訴人井前弘幸への戒告処分を取り消す」。「おーっ」「よしっ」と傍聴席満杯の支援者がどよめく。5月23日、「君が代」不起立共同裁判の控訴審判決で裁判長が処分取り消し部分を読み上げた時だ。しかし、続いた「その余の控訴人らの控訴をいずれも棄却する」には、一転して「不当だ」「おかしいぞ」と怒りの声が噴出した。

 2011年、大阪維新の会・橋下徹府知事(当時)は国旗国歌条例、職員基本条例を制定。教職員に入学式・卒業式の「君が代」起立斉唱を強制し、従わない者が3回処分を受ければ免職という強権支配で、被処分者はのべ63人に及ぶ。これに対し、処分は不当、条例は憲法違反と次々と提訴が続き、今回の裁判は2015年に被処分者7人が共同提訴したものだ。1審大阪地裁は訴えを退け、全員が高裁に控訴していた。

 控訴審判決は、控訴人(原告)の井前さんについて、「懲戒事由」とされた2つの職務命令(教育長通達、校長)違反のうち校長による職務命令の事実がなく、処分は教育委員会の裁量権を逸脱・濫用し違法として取り消した。維新府政の「君が代」不起立処分では初めての取り消しだ。

 ところが処分を違法としたにもかかわらず、損害賠償請求には、府教委に違法となるミスがないとして棄却。1審、2審を通した訴えで最も重視してきた国旗国歌・職員基本条例の違法性、違憲性をめぐっては一切判断を回避し、6人の控訴を棄却した。控訴人7人はただちに上告の意思を表明している。

 判決報告集会で、「日の丸・君が代」強制反対・不起立処分を撤回させる大阪ネットワーク事務局長の山田光一さんは「8件の不起立処分裁判で初となる取り消しの意義は大きい。単なる校長のミスでなく、現場への強制の矛盾」と強調。井前さんも「すべて府教委の思うがままを許さず、押し込んで一矢報いた。肝心の条例そのものの違法・違憲を問い最高裁で闘いぬく」と述べ、満場の拍手を受けた。

 大阪府は不起立処分教員の定年後再任用を拒んできたが、今年度、該当する2人の任用を拒否できなかった。入学式・卒業式の不起立者もとだえることはなく、人事委員会審理、裁判闘争が続いている。



ノー!ハプサ第2次訴訟不当判決糾弾

 靖国神社への合祀取り消しを求めた韓国人被害者によるノー!ハプサ(合祀)第2次訴訟の判決が5月28日、東京地裁で出された。「請求を棄却する」。10秒もかけない言い渡しに、法廷内は怒号が飛び交った。弁護団は「心情はわかるが耐えられる程度のものとした、被害者を再び踏みにじる内容」と報告。原告は「このままここに座り込んで抗議したい」と訴えた。(詳報次号)

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