2019年06月14日 1579号

【未来への責任(275)靖国合祀は国際人権法違反だ】

 5月28日に開かれた東京地裁での韓国人・靖国合祀取り消しを求めるノー!ハプサ(NO!合祀)二次訴訟に参加した。

 判決は、十数秒で終了。裁判官は「棄却」とだけ言って逃げるように出ていく。法廷は怒りに包まれた。韓国から来日した2人の原告は裁判所前で「日本の戦争によって父を奪われ孤児のように生きてきた。裁判官は人を無視するのもほどほどに。父の名を取り消すまでこのまま座り込みたい気持ち」(パク・ナムスンさん)、「何も言わない判決に怒り。裁判官自身が判決は誤りと思っているからか」(イ・ミョングさん)と涙を流しながら訴えられた。胸が痛む思いだった。太平洋戦争被害者補償推進協議会と民族問題研究所は「日本司法府まで侵略戦争と植民地支配の誤りを否定し戦争国家へ回帰しようとする安倍政権と歴史認識を共にしている。韓国人被害者の人権を回復するために国連人権機関など国際社会に訴えていく」と決意を明らかにしている。

 夜にはノー!ハプサとヤスクニ・キャンドル行動の共催で、法学博士のチョ・シヒョンさんの講演会を開いた。「朝鮮半島出身の軍人軍属の靖国神社合祀問題と国際法」と題し、国際人道法、国際人権法等の観点からヤスクニ合祀、戦死者の扱い、遺族の権利等について明らかにされた。

 日本では「戦没者」といい、軍人・軍属の公務上の死亡に限られるが、国際人道法では戦争犠牲者(War Victim)といい、戦傷者以外に戦争捕虜、民間人も含まれる。チョさんは「日本は民間人を放置する、まさに人権後進国である」と批判した。大切だと思ったのは、「国際人道法は自国の兵士はもちろん敵国の兵士にも適用される。当然、戦時中に死亡した植民地出身者にも適用される。それによると、国家は死亡者の捜索、身元確認、埋葬、家族への通報、遺体の送還などの義務を負う」という認識。また、「国際人権法では、宗教の自由を超え、人間の尊重、家族の権利、重大な人権被害者の権利等が保障されている。韓国人犠牲者の捜索はおろか遺族への死亡通知も全くせず、遺骨・遺体の送還もしない日本政府の態度は、国際人道法にも国際人権法にも明らかに違反している」という指摘だ。

 1949年ジュネーブ協約には、死者のことも遺族のこともはっきりとうたわれている。「死者をできる限りその属する宗教の儀式に従って丁重に(respectfully)埋葬する」こととされ、宗教に関わることは国家によって決められる問題ではなく、個人が自主的に決める問題とされている。さらに、「死亡者尊重の原則」では、死亡時点だけでなく、死者と関連する戦後の行為に対しても適用されるべきとの見解である。

 日本政府と靖国神社が遺族の意志も一切確認せず、一方的に靖国神社への合祀を行ったことは、明白な国際人権法違反だ。ロシア連邦憲法裁判所や欧州人権裁判所、米州人権裁判所の判決はいずれも死者の尊厳を尊重し、遺族・家族生活への干渉を禁じているのである。人権後進国・日本を国際人権機関に引きずり出そう。

(ノー!ハプサ 御園生光治)

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