2019年06月21日 1580号

【事故、基地被害の背後に日米地位協定/改定拒む日本政府/人権より軍事最優先の安倍】

 民意無視の沖縄辺野古基地建設とともに日常的な米軍機による事故、米兵による犯罪被害。これらの背後には、米国優位の日米地位協定があり、しかも日本政府は意図的に放置している。他国の地位協定と比較し、その問題点を明らかにする。

 日米地位協定は、日米安保条約に基づき米軍が日本に駐留するにあたっての米軍人軍属の法的地位(国内法の適用範囲など)を決めたもの。だが同じ軍事同盟であるNATO(北大西洋条約機構)下の地位協定と比べても著しく米軍優位となっている。

 日弁連と沖縄県の調査報告書を元に、日米地位協定の問題点を見てみよう。

世界標準は国内法適用

 ドイツ、イタリア、ベルギー、英国(以下、欧州4か国という)とも米軍に国内法を適用している。その結果、米軍の行動に対して各種の許可・規制の権限を持っている。

 ドイツは、米軍の施設の使用、訓練・演習に対して国内法適用を協定に明記している。他国も同様だ。

 一方日本政府は「一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には特別の取決めがない限り接受国の法令は適用されない」とする。欧州4か国の例は、米国もこの「特別の取決め」に応じていることを示すものであり、日本政府が交渉すれば可能だ。

 そもそも「国の領域内にあるすべての人・物には、国内法が適用される」というのが国際法の常識であり、その例外を定めたのが地位協定だ。政府の言い分は全くの誤りだ。

 米軍への国内法適用を明記する欧州4か国は、米軍の訓練など国内での軍事行動に様々な規制をかけている。

 ドイツでは米軍は訓練・演習の実施にドイツ側の許可、承認、同意等が必要であり、米軍機の飛行高度を最低300mに制限する。

 イタリアでは駐留軍基地は、イタリア司令官の管理下に置かれている。平時の作戦行動はイタリアの法規に従わなければならない。

 イギリスは米軍機の飛行制限・禁止も可能。夜間・早朝・週末は訓練飛行禁止となっており、米空軍の様々な活動が英国防省の承認を要する。

 ベルギーでは、米軍用機の飛行はベルギー国防省の許可を要し、ベルギー国王はすべての航空機に対して飛行禁止する権限を持つ。土日祝日は通過以外の飛行は禁止。7月1日〜8月31日の間は夜間飛行は不許可だ。

 また、4か国とも航空管制権は受入国が持つ。だが日本は嘉手納空域は形式上返還されたものの、岩国空域、横田空域は米軍が握ったままだで、民間航空機の飛行が制限されている。

 欧州4か国は、基地内の管理権も受入国が有する。

 ドイツでは、ドイツ側に基地立ち入り権があり、自治体によっては、郡長・市長が事前通告なしに24時間立ち入ることもできる。イタリアでは、駐留軍基地はイタリア司令官の管理下に置かれており、イタリア司令官はいかなる制約も受けずに基地内に立ち入ることができる。ベルギーでは市長に基地立ち入り権があり、米軍基地広報官も「周辺自治体の首長が基地内への立ち入りを希望した場合には、当然、基地内に入ることを許可する。首長は、電話で依頼するだけで基地に入る許可が得られる。市役所の職員でも基地内には当然入ることができる。基地はベルギーの領土内にあるのだから」と述べる。

自衛隊は治外法権

 日米地位協定には、欧州4か国にみられる国内法適用等が定められておらず、住民の人権侵害につながっている。

 嘉手納や横田などの爆音訴訟では、爆音被害は認められても飛行差し止めについては「日本政府の権限外」として却下されている。オスプレイなど軍用機の昼夜を問わない騒音や危険な低空飛行は基地所在地以外にも広がっているが、規制はできない。

 米軍人軍属の事件・事故は公務外であれば日本警察が捜査できるが、公務であればできない。公務か公務外かは米軍が決める。被害者は米軍が犯人の情報を提供しなければ賠償請求もできない。基地内での環境破壊・危険有害物質の垂れ流しが疑われても、自治体など監督官庁の立ち入りはできない。民間地への米軍機墜落事故でも地元警察や国の事故調査委員会すら手出しできない。

 日本政府はこれら住民の人権の危機にもかかわらず、あえて地位協定改定を求めず、在日米軍の日本国内での行動にフリーハンドを与えている。

 それは、日米軍事同盟を使った自衛隊の軍事行動にまで制約がおよぶことを嫌うからだ。安倍は「海賊対処」を口実にアフリカのジブチに自衛隊を海外派兵してきたが、その必要がなくなっているにもかかわらず駐留を続け、ジブチ政府と地位協定をむすんで恒久的な駐屯地を建設した。その地位協定は、自衛隊の事件事故は公務・公務外にかかわらず免責とすることなど、日米地位協定の米軍優位に輪をかけた自衛隊優位の協定となっている。今後、戦争法による海外派兵の拡大を見越せば、日米地位協定の改定はその障害になりかねない。

 日本政府が地位協定改定を拒むのは安倍戦争政策推進のためだ。軍事最優先の安倍を参院選で退場させる時だ。

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