2019年07月05日 1582号

【イラクと日本 イラン攻撃寸前の危機 トランプは軍事挑発やめよ】

 6月20日、トランプ米大統領は、イランが米軍の無人偵察機を撃墜したことを口実に報復攻撃を承認し、実行直前に中止した。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、米軍はイラン国内のレーダー施設やミサイル発射施設など5か所ほどの目標を爆撃する計画で「軍用機は離陸し、軍艦はそれぞれの位置についていた。ミサイルはまだ発射されていなかった」(米政府高官)と報じた。

 ここまで緊張が激化している最大の原因は、トランプ政権の対イラン挑発である。

 2018年5月、トランプは、オバマ前政権などがイランとの間で結んだ核合意(包括的共同作業計画〈JCPOA〉)から離脱すると発表した。合意は、イランが核計画を制限することと引き換えに国連と米国、EUによる経済制裁の解除を定める。実際に機能し、イランは遵守してきた。トランプはこの平和プロセスをぶちこわした。

 米軍は空母エイブラハム・リンカーンを中心とする空母打撃群と爆撃部隊をペルシャ湾方面に配備し、最大12万人の兵力を準備している。5月には1500人を中東に増派。6月13日、ペルシャ湾の出口ホルムズ海峡で日本などの会社が運航するタンカー2隻が攻撃されると、「イランがやった」として米海軍第5艦隊のミサイル駆逐艦を派遣した。17日にはさらに中東への1000人の増派を発表した。

 イランもまた、ウランの濃縮率を4倍にしてJCPOAで取り決めた300`のウラン保有上限を突破すると発表し、米国に対抗している。世界的産油国であり中東有数の軍事大国イランは、ロシアなどの支持を背景に、米国や米国を後ろ盾とするサウジアラビアやUAE(アラブ首長国連邦)などの諸国と中東での主導権を争っているのだ。

派兵も視野に入れる日本

 安倍首相は6月12〜14日にイランを訪問し、自らを「中東和平の立役者」と演出しようとしたが、全くの失敗。
 それどころか6月18日、海上自衛隊トップの山村浩幕僚長は、ホルムズ海峡に海自が派遣される可能性について「政府の決定に基づき行動する」と発言した。政府関係者は「攻撃の頻度や国際社会の動向も見極め、人命・財産保護が必要と判断されれば、海上警備行動の発令は選択肢」とする(6/21時事)。安倍政権は中東への軍事介入すら視野に入れている。背後に、石油権益や利権(6/21イラクと1100億円の円借款締結)があることはいうまでもない。

 世界の反戦運動は「イランに対する制裁措置を即時撤廃し、イラン核合意に再加入するための話し合いを開始しろ」(コードピンク=米国の女性反戦団体)と即座に立ち上がった。中東民衆も軍事侵攻と戦争に反対の声を上げている。

 2019ZENKOin東京(7/27〜7/28)には、イラク労働者共産党サミール・アディル書記長も参加する。中東、世界の民衆と連帯し、トランプに、安倍に、対イラン戦争NO!の声を突きつけよう。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



 
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