2019年07月19日 1584号

【みる…よむ…サナテレビ(524) 2019年7月6日配信 イラク平和テレビ局in Japan/バグダッドの露店商追い出しをやめろ】

 イラクの首都バグダッドのカラーダ地区は商業地区として繁栄してきた。しかし、2003年の米軍によるイラク占領以後、イスラム主義勢力の爆弾攻撃が頻発した。ようやく商店街を再興してきた矢先に、バグダッド市当局は「地域の美観を回復する」という名目で露店商を追い出し、そのために仕事を失う市民が続出している。

 2019年3月、サナテレビは、当事者である町の商店主や露天商に直接インタビューし、実態を明らかにした。

 ある商店主は、自分の店の中で答える。爆弾攻撃の被害によって、この町の商店主たちは店舗の家賃が支払えないなど多くの問題を抱えてきた。借金が返せずに店を手放す人も出た。何とか商店街を整備した途端に、当局が露天商を一掃してしまった。

 この商店主は「露天商は町を彩(いろど)るすばらしい風景の一部だ」と言う。町の独特の賑わいを作り、多くの客が集まるおかげで、露天商も商店主も売り上げを増やしていた。それが、市当局の無慈悲な弾圧のために、肝心の客が来なくなってしまった。彼は「商品が1日に1つか2つしか売れません」と憤る。

 商店を貸す金持ちだけはもうけ続けるが、商店主たちは高い家賃を払っているのに売り上げが激減し、生活にも困るほどに追い込まれている。

 サナテレビは露店商の訴えも伝える。バグダッド市当局は路上での販売を禁止する代わりに、場所を提供しようとしたが、ずさんな計画で全くうまくいかなかった。結局、「私たちを脅かして何の補償もしないで追い出しました。当局は『お前たちが違法なのだ』と言ってきました」と語る。

 もう一人の露店商も「行政当局は貧困者のために何もしないで戦争を仕掛けている」と痛烈に批判する。この人たちは、商売に使った場所をきちんと掃除して、「道路使用の賃貸料金を払うつもりだ」と言っている。まじめな零細業者をいじめる当局に怒りがわく。

 イラク政府とバグダッド市当局は「町の美観」を口実に露天商を追い出した。しかしそのためにむしろ訪れる人が減り町は寂れている。サナテレビは露天商の権利を守り、市民の力で町の賑わいを取り戻そうと訴えているのだ。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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