2019年07月26日 1585号

【参院選争点/消費税/税率10%?/増税で生活破壊に追い打ちか/廃止してデフレ不況克服か】

 参院選最大の争点の一つは「10月からの消費税増税」の是非だ。政府の統計調査でも生活苦の進行を示している。だが、自民党総裁安倍晋三は「消費は堅調だ」と強気の姿勢を崩さない。公明党も「軽減税率」と引き換えに追随している。市民生活にさらなる打撃を与える消費税増税をやめることはデフレ不況の克服につながる。10月実施はまだ止められる。参院選後の国会で中止法案を成立させればよい。

生活悪化示す統計

 安倍は消費税率10%への引き上げを過去2回、見送っている。14年4月の8%への引き上げで消費低迷を招いた責任をごまかそうと11月、1年半の引き上げ延期を打ち出し「国民に信を問う」と解散・総選挙に出た。「再延期はしない」と公約しながら、16年6月には、「新しい判断」だと再延期を表明し、7月の参院選に臨んだ。看板とする「アベノミクス」から生活実感がますます離れていくからだ。

 では今回、3年前、5年前に比べ、消費動向は「堅調」なのか。どうみても、悪化の一途をたどっている。

 厚労省は7月2日、「国民生活基礎調査」を公表。昨年7月に6000世帯を調査したところ、1世帯当たりの平均所得が551・6万円。4年ぶりに前年を下回ったのだが、94年の664・2万円から100万円以上低い。生活実感は「大変苦しい」「やや苦しい」あわせて57・7%に及ぶ。9日には、「毎月勤労統計」の速報値が示された。今年5月の実質賃金の平均値は前年同月比マイナス1%。5か月連続、前年を下回った。パート労働者は2・2%の減になった。

 内閣府の6月の消費動向調査(7月1日公表)では、消費者心理を示す消費者態度指数は前月から0・7ポイントさがって38・7。9か月連続して減少している。安倍が1回目の延期をした14年11月以来4年7か月ぶりの低さだった。

 どこが「堅調」なのか。家計収入は減り、消費はますます抑えられる傾向にあることは明白だ。

不況の元凶 消費税

 安倍は「今後10年消費税を10%から上げる必要はない」と言う。実際には、10%引き上げは、今後10年以上にわたりデフレ不況を悪化させ、さらなる引き上げなど到底できない状態を引き起こすのだ。

 これまでの消費税率引き上げの影響を見てみよう(図1)。97年11月、消費税率3%から5%の引き上げで消費は落ち込み、2・61%あった消費の伸び率は1・14%に鈍った。5%から8%に引き上げた後は0・41%にとどまっている。



 リーマンショックや東日本大震災は大きく消費を落ち込ませているが、数年後には回復を見せている。だが、消費税率の引き上げショックは、その後長く消費の伸びを抑えていることがわかる。

 経済は需要と供給のバランスで成り立っている。いま個人消費が停滞し、物が売れないデフレ不況が起きている。消費税率の引き上げは、さらに個人消費を縮小させ、経済を停滞・悪化させることは明らかだ。

富の再分配が必要

 このデフレ不況はいつから起きているのか。「バブル崩壊後に断行された消費税増税が破壊的インパクトをもたらした」とする分析がある(『世界』8月号藤井聡)。バブル崩壊後もGDP(国内総生産)は2・2%の伸びを維持していた。しかし、97年消費税率5%引き上げ後の20年間は、平均成長率は0・16%にとどまっているのだ。この低成長は欧米には見られない日本だけに起こった特異なものだ(図2)。



 昨年度の税収がバブル期の最高額を超え、過去最高60兆3564億円になった。バブル期とは1990年。やっと30年前の税収に戻ったに過ぎない。だが、その構成は大きく変わった(図3)。30年前、税収の8%に満たなかった消費税がいまや29%にもなった。その増額分13兆円とほぼ同額、法人税・所得税が合わせて12・2兆円減税された。消費税率の引き上げと法人税・所得税の最高税率引き下げがセットになっていた。つまり、税金の徴収先を大企業や高額所得者から中小零細企業者や消費者に付け替えたのだ。



 この消費税率引き上げにより、消費は一層冷え込み、企業は設備投資を見送り、非正規化によるコストカットに励み、膨大な内部留保を抱えることになった。消費税は景気に左右されない安定財源だと政府は言う。言い換えれば、好景気の時に納税額が増え景気の過熱を抑える法人税や所得税と違い、消費税は好不況関係なく消費を抑える性格を持っているということだ。

 消費税を廃止し、最低賃金引き上げで消費を促せば、デフレ不況は克服できる。正規雇用の拡大、社会保障の充実が生活に安定をもたらし消費を促す。法人税、所得税の最高税率を元に戻し、富の再分配をはかり、格差是正を図ることが今必要なことだ。

   *  *  *

 安倍政権下で行われたいくつかの国政選挙では、政策に反対する民意が投票結果に表れない事態が続いている。半数近い有権者が投票をしないためだ。世論調査では消費税増税反対は6割。市民生活を破壊する増税やめろと声を上げれば、ストップは可能だ。
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