2019年08月02日 1586号

【米軍による空の支配、いつまで/宮森小戦闘機墜落から60年/日米地位協定と密約の実態を知る】

 1959年6月30日、米軍のジェット戦闘機が沖縄・宮森(みやもり)小学校に激突・炎上し、18人の尊い命を奪った大惨事から60年。7月14日都内で「宮森・630を伝える会」やジュゴン保護キャンペーンセンターなどでつくる実行委員会が主催し、「沖縄は、東京の空は、いつまで米軍に支配されているのか〜日米地位協定と密約の実態を知る」をテーマにつどいが開かれた。「伝える会」の牛島貞満さんとジャーナリストの吉田敏浩さんが講演した。

 3年前まで都内の小学校の教員だった牛島さん。「授業中に、休み時間に米軍機が突っ込んでくるなんて想像したこともない。しかし、実際には起きた」と話し始め、「おかしいと思いませんか? 学校や病院、住宅地の真上を低空で米軍機が飛ぶのを。米軍機が事故を起こすと現場を封鎖し、日本の警察が捜査できないことを。民間機が入れない米軍支配の1都9県にまたがる巨大が空域があることを」と問いかける。

 吉田さんの講演につながるキイワードも示した。翁長雄志・前沖縄県知事の「日本国憲法の上に日米地位協定があり、国会の上に日米合同委員会がある」という指摘、そして岡本行夫・元首相補佐官の「日米合同委員会は米軍が合意を守っているかを日本がチェックする機関。米側にとっては小うるさくてしょうがない」という発言だ。

 『「日米合同委員会」の研究―謎の権力構造の正体に迫る』などの著書がある吉田さん。日本のエリート官僚と在日米軍の高官から成る日米合同委員会は、米軍に広範な特権を認めた日米地位協定を支える機関で、憲法体系を超越する数々の密約が交わされてきたことを明るみに出す。「岡本さんの発言は逆。米軍が特権を維持するために日本の官僚機構と密室で協議し、地位協定や日本の国内法を超える合意を結んできた」

 高さ2450bから7000bまで日本列島の真ん中をさえぎって米軍が航空管制を握る「横田空域」は、1975年の「航空管制委任密約」で設定された。羽田空港を使う民間機は、急上昇して横田空域を飛び越える非効率的な飛行を強いられる。ニアミスなどのリスクも高まる。

 横田空域を米軍はオスプレイの低空飛行訓練やパラシュート降下訓練などに利用し、手放さない。日米合同委員会の合意は憲法や法律を超越して日米両政府を拘束する、と異常な解釈がなされる。翁長前知事の指摘どおりの現実が日本全体を覆っている。吉田さんは警鐘を乱打した。

 パネルディスカッションで牛島さんは「(地位協定の改定は)政治的な主義主張と関わりなく要求すべきこと。住民の命と安全を守るため、沖縄県が主導した全国知事会の要望を大きく取り上げるべきだ」、吉田さんは「安保法制の『同盟調整メカニズム』で日米軍事一体化が進む。自衛隊の軍艦がペルシャ湾に派遣される可能性も。南西諸島には自衛隊が配備されている。沖縄を再び日本の防衛線、捨て石にしてはならない。日本が海外で武力行使し、他国の人を殺傷する加害者になる危険が大きい」と述べた。

 
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