2019年08月09日 1587号

【低線量被ばくと原発再稼働に反対する/ZENKO分科会/被害の可視化 「2倍家賃」請求撤回を】

 ZENKOin東京第4分科会「低線量被ばくと原発再稼働に反対する」では、避難者支援、裁判闘争、再稼働反対、低線量・内部被ばく反対の具体的な取り組みとその意義が多岐にわたり報告された。

 避難者切り捨てを許さない闘いの当面の最大課題が、福島県による国家公務員宿舎入居者(区域外避難者)への「2倍家賃」請求を撤回させること。ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)幹事で福島原発かながわ訴訟原告団長の村田弘さんは「オリンピックを前に避難指示を解除し避難者への支援策を終了することで、福島原発事故が消されようとしている。可視化する問題として2倍家賃請求撤回は重要な取り組み」と報告。原発避難者住宅裁判を準備する会世話人代表の熊本美彌子さんは「2倍だと月15万円を超える世帯もある。住み続けているのは、高い家賃の民間賃貸住宅に引っ越せない世帯、安い家賃の公的住宅を希望しても入れない世帯。行政が公的住宅を確保すべき世帯に対し、あろうことか損害賠償金を課し、追い出しをはかっている」とネット署名への協力、支援拡大を呼びかけた。当事者の男性は「定職に就けない状況のため都営住宅に応募するも6回落選した。せめて当選するまでいさせてほしい」と支援を訴える。

 2倍請求されたのは少数だが、個別の住宅提供策からも外され取り残された避難者だ。議論では「対象者は少なくなったが、原発事故に対応した住宅保障の法・制度がないことで追いつめられた犠牲者だ。ここで闘わなければ住宅問題はなかったことにされてしまう」と全国的に取り組む必要性が発信され、「大きな人権問題。国連からも住宅支援を打ち切らないよう指摘があった。国際世論を味方につけよう」などの確認がなされた。

東電刑事裁判勝利へ

 裁判闘争は、東電刑事裁判の9月19日判決勝利が柱となる。津波到来を認識しながら手を打たなかった東京電力旧経営陣の過失責任・刑事責任の確定は、全国各地の損害賠償裁判勝利、再稼働阻止につながる。東電の刑事責任を追及する会の小林和博さんは「なんとしても勝利するため、要請はがきの提出、9月8日厳正判決を求める大集会への結集を」と呼びかける。もう一つの柱、損害賠償裁判は京都・神奈川など先陣が控訴審段階に入っている。一審で唯一国の責任が免罪された千葉からは、千葉県原発訴訟の原告と家族を支援する会の山本進さんが「地裁で拒否された裁判官現地視察を高裁では6月に実現させた。逆転勝利判決で原告を励ましたい」と支援強化を訴えた。“想定外の津波”論が破たんした国は「対策をとったとしても被害は防げなかった。絶対安全はない」と開き直る。かながわ訴訟・東京訴訟も審理する東京高裁での千葉の逆転勝利が持つ意味は大きい。

地元市民と連帯

 再稼働阻止の闘いの報告は、毎週行動を続ける関電前プロジェクトの秋野恭子さん。原発立地・周辺自治体での反対が重要なため地元市民との連帯を進めてきた。「しかし、関電本社前の参加は先細り。ネットの活用や全国同日行動などで問題を掘り起こしていきたい」と課題を述べた。議論では「避難者との連帯を強め、事故のひどさをリアルに投げ返すことが必要」などの意見が出された。千葉の山本さんからは、経団連会長企業・日立製作所の膝元、東海第2原発の再稼働阻止が東日本での重要課題になっていると提起され、現地・周辺自治体とのつながり、8月3日の新宿デモ、日本原子力発電抗議などの取り組みが呼びかけられた。

 低線量被ばく・内部被ばくとの闘いでは、北海道の三浦一路さんが放射能健康診断100万人署名の実例を表やグラフにまとめ、署名獲得のノウハウを披露した。署名運動の今後について、司会を務めた同運動全国実行委員会事務局長の小山潔さんが「全国実行委員会を開いて総括を出し区切りを付け、今後の方向を整理したい」と報告。医療問題研究会の医師からは甲状腺がん以外の疾病と放射能との関連づけを意識した調査活動の方向が述べられた。

 議論では、低線量被ばくそのものを争点とした子ども脱被ばく裁判、井戸川裁判(福島被ばく訴訟)支援の意義が提起された。子ども脱被ばく裁判を支える会・東日本の稲井邦利さんは「帰還政策が進む中、この裁判の勝利は低線量被ばくを問題にする取り組みに大きな影響を及ぼす。福島の被災者に連帯し福島地裁にかけつけよう」。裁判は証人尋問の段階に入り、“セシウムボール”の危険性を訴える河野益近さん、“ミスター100ミリシーベルト”山下俊一の尋問が行われる方向だ。

 京都で市民放射能測定所を立ち上げ、避難者の裁判闘争を支え続けている「うつくしま☆ふくしまin京都」の奥森祥陽さんは、空家を活用した「保養の家」開設を報告した。「子どもだけでなく家族連れで利用し誰もが少しでも被ばくを避けてほしい」と呼びかける。奥森さんが今後の課題として提起したのは「健康手帳の交付」の取り組み。「被ばくの長期化、将来にわたる様々な健康影響を考えたとき、手帳の交付とそれによる検診継続、記録、医療補償は大切。原爆被爆者援護法に準じた立法化をめざすべき時期に来ている」と提案。検討課題となった。



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