2019年08月16・23日 1588号

【改憲にジャマなら国会議長もクビ/ごり押しと数合わせに走る安倍/軍事費削り人権守る憲法実現を】

 参院選で改憲勢力は3分の2を割り敗北した。任期内の改憲を目指す安倍に時間は残されておらず、なりふり構わぬごり押しと数合わせに頼るしかなくなってきた。憲法を生かす運動を強め、安倍改憲策動を追い詰める時だ。

執ようにワイルド改憲

 安倍側近の自民党萩生田(はぎうだ)光一幹事長代行がまた暴言を吐いた。ネットテレビの『櫻ライブ』(7/26)で大島理森(ただもり)衆院議長を名指しして「憲法改正するのはまさしく国会。最終責任者は総理でなく、議長だ。大島さんはどちらかといえば調整型。今のメンバーでなかなか動かないのなら、有力な方を議長に置いて憲法改正シフトで国会が(憲法論議を)行っていくのは極めて大事だ」と述べた。

 大島は昨年10月、「憲法は一般の法律とは違い、法律の基本だ。できるだけの合意形成をつくりながら、進めていかなければならない」と少なくとも形式上は良識ある発言をしていた。「(天皇の)ご譲位が終わって新しい時代になったら、少しワイルドな憲法審査を進めていかないといけない」(4/18)と述べ安倍改憲の「切り込み隊長」を気取る萩生田にとって、大島はよほど軟弱に見えたのだろう。

 だが今回の発言は「はねっ返りの暴走」では済まされない。衆院議長は行政・立法・司法の三権の長の一角。選出方法は衆院議員による選挙だ。その衆院議長の「首のすげ替え」を政権与党の幹事長代行が公言するなど権力乱用の思い上がりにもほどがある。

改憲 口にする資格なし

 安倍側近、萩生田の発言は、7月参院選で「改憲勢力3分の2」を割り込んだ安倍の焦りを表している。

 萩生田は発言について「言葉足らず」と釈明をしたが、謝罪も撤回もしていない。本来なら「国会の権威を傷つけた」として処分あって当たり前だ。しかし、自民党は「立場を考え慎重に」(二階俊博幹事長)と釘を指すポーズを取っただけだ。突出した言動をさせるだけさせて形の上ではおさめ、国会の「空気」を改憲に引きずっていこうとの意図が透けて見える。

 安倍の妄言も同様だ。選挙結果について安倍は「『少なくとも(改憲)議論は行うべきである』、これが国民の審判だ。野党はこの民意を正面から受け止めていただきたい」と民意を捻じ曲げる。だが、与党公明党・山口那津男代表もこの見方を否定した。

 安倍改憲は行き詰まっている。公明党代表にまでダメ出しされた安倍はなりふり構わぬ数合わせに出ている。「国民民主党の中には、憲法改正について議論すべきだ、と考えている方々がたくさんいると私は思っている」と国民民主党に秋波を送る。参院選で後退した同党玉城雄一郎代表は「議論する国会を国民は求めている。議論しない国会を改めなければならない」とすり寄る。自らも合意した市民連合・立憲野党の共通政策にも反する裏切り行為だ。

 一方、「北方領土」をめぐる戦争発言で日本維新の会を除名になった丸山穂高を引き取った「NHKから国民を守る党」は「憲法改正の発議に賛成するという条件というか、協力することを武器に、スクランブル放送を実現したい」と協力を表明した。

 改憲推進である自公・維新も目指す改憲の内容は異なる。石破茂元自民幹事長が「改憲派3分の2は虚構」と述べるのが実態だ。とにかく数合わせのために、生き残りへ節操も捨てる国民民主、公約実現への取引を狙うN国の取り込みに奔走しているのが、参院選後の安倍―改憲勢力だ。

 こうした勢力に、国の在り方を示す憲法を議論する資格などないことは誰の目にも明らかだ。

根本的政策転換へ

 国会内での改憲論議がここまで低劣になっては、世論の支持も広がるはずはない。改憲勢力を一掃するチャンスだ。各種世論調査で大勢を占める改憲反対の世論を安倍打倒運動と投票行動に結びつけ、一気に追い詰めねばならない。

 次期衆院選を展望し、安倍政権―改憲勢力を退場させるために今必要なのは、市民連合・立憲野党合意を政策に反映させる運動だ。

 平和主義に反する安倍大軍拡を押しとどめ、年間5兆円を越える軍事費を大幅削減する。大企業・富裕層優遇税制をなくし法人税・所得税の最高税率を引き上げ、消費税を廃止する。グローバル資本の負担を原資に、社会保障費・教育費をはじめとする生活関連予算を大幅に積み増すことで、生存権・教育権・幸福追求権など基本的人権の保障に充てる。憲法を地域、社会の隅々から実現することが改憲阻止の力を強める。



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