2019年08月16・23日 1588号

【沖縄の民意は米国揺るがす フジロックで発信するデニー知事 工事止める現地阻止行動へ】

在沖海兵隊の分散移転

 すでに米国連邦議会を通過した2020会計年度国防予算の大枠を定める「米国防権限法案」に、在沖米海兵隊をインド太平洋に分散移転する現行計画を再調査すべきだとの要求が盛り込まれていることが分かった(7/26琉球新報)。同法案は、前段で「在沖海兵隊の削減は急務であり、国防長官は沖縄やグアム、ハワイ、オーストラリアなどの部隊の展開計画を再調査しなければならない」と記述。再調査の内容として、地元住民の政治的支持の評価、総事業費の精査、増大する軍の規模・訓練の分析―などを挙げる。その調査結果を受け、国防長官は軍事委員会に対して15日以内に現行計画を続行するか、日本政府と協議の下で変更するかどうかを伝えなければならないとしている。

 このような米国内での在沖海兵隊削減・再編の動きがあっても、安倍政権下の日米協議ではこれまでどおり辺野古新基地建設計画の続行を意見表明することは明らかだ。

 しかし、指摘されている項目の「地元住民の政治的支持の評価」については、最近の参院選まで連続5度の選挙や住民投票で沖縄県民の揺るぎない民意が辺野古新基地建設阻止であることが示された。「総事業の精査」では、軟弱地盤が見つかったことで地盤改良工事をしなければならず、新基地建設の工期や総工費を政府がいまだに明らかにできない事態に陥っている。完成時期も総費用もわからないでは、一般の民間事業ならとうに事業計画自体が白紙撤回されていてもおかしくない。

 米国政府も、県を先頭に県民が辺野古新基地建設に反対していることは十分把握している。日本政府がそのことを全く持ち出さず、財政負担を負う対応の下で、辺野古「移設」を容認しているにすぎない。2014年翁長県政の誕生以来、様々な回路で県民の民意は米国に届いている。

沖縄の声を若者に届ける

 翁長雄志前知事の遺志を継いだ玉城デニー知事が、さらに「沖縄の声」を全国に届けようと動いた。7月28日に新潟県の苗場スキー場で開催された国内最大級の野外音楽イベント「フジロックフェスティバル」会場内の「アトミック・カフェ」で、沖縄をテーマにしたトークライブに出演したのだ。現職知事のフジロック出演はもちろん初めて。ジャーナリストの津田大介さんを進行役に、沖縄の人気バンド「ORANGE RANGE(オレンジレンジ)」のYOHさん、「辺野古」県民投票の会代表の元山仁士郎さんが参加した。

 玉城知事は「沖縄に米軍基地があり続けている環境が戦後74年、日本復帰から47年たってもほとんど変わっていない」と強調。元山さんは「国がやっていることはどうにもならないと諦めている人がすごく多いと思った。でもそれを変えてくれないかと、県民投票で意思を示そうとやった」と振り返った。

 トークのあと、玉城知事は持ち込んだギターを手に「見張り塔からずっと」「雨を見たかい」の2曲を披露した。米国の歌手ボブ・ディランの体制批判の曲と、米国のロックバンド、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルのベトナム反戦歌を一部辺野古の歌詞に変えて歌うなど、政府をちくりと批判し、会場の若者に辺野古新基地建設に反対する沖縄の声を届けた。

埋め立て進捗率は0・5%

 辺野古埋め立ての進捗状況は、7月8日県議会での県の回答で全体の2・8%と試算されていた。これに対し、土木技師で沖縄平和市民連絡会の北上田毅さんは、計算方法が誤っていると指摘。実際の埋め立ては全体の0・5%であることが明らかになった。県も北上田さんの指摘に同意し、近く数字を訂正して正式に発表することになった。

 埋め立ての外周の護岸は現在、工事用基準水面から4bの高さで工事は続けられている。設計概要に基づけばそこからさらに完成地盤高の8bにまでかさ上げしなければならないことを、県の試算は見逃していた。今見えている倍以上の高さにまで土砂を投入しなければならない。

 埋め立ては当初の予定より大幅に遅れている。辺野古ゲート前の毎日3度座り込む市民、名護市安和(あわ)桟橋と本部(もとぶ)町塩川港のダンプに抗議する市民、埠頭の土砂台船の周りに張り付くように行く手を遮るカヌー隊など、連日の行動で工事は思惑通りには進まない。闘いの現場が4か所、5か所にも分かれながらも、懸命に阻止行動に立ち上がる市民によって辺野古新基地建設工事は止められている。

 10月21日からの連続5日間大行動も現地実行委員会から呼びかけられた。辺野古を止める行動に参加しよう。(N)



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