2019年08月30日 1589号

【ヤスクニキャンドル行動/なぜ加害者が被害者ヅラできるのか?/日本の植民地支配責任を問う/「表現の不自由展・その後」の再開を】

 「平和の灯を!ヤスクニの闇へ第14回キャンドル行動」が8月10日都内で開かれ、400人が参加した。安倍首相の歴史歪曲と国際法違反により日韓政府間の関係がかつてなく悪化する中、“今こそ市民が手を携えてアジアの平和を”と訴えた。

 シンポジウムのテーマは“今、ヤスクニと植民地責任―なぜ加害者が被害者ヅラできるのか?”。歴史研究者の竹内康人さんは日韓会談の経過を検証し、「日韓請求権協定で消滅したという『すべての請求権』は韓国の対日請求要綱8項目と拿捕(だほ)漁船に関わる請求権のこと。政策として個人請求権そのものを消滅させたくても理論的には消滅させることはできない」と安倍政権の解決済み論を批判した。女たちの戦争と平和資料館館長の渡辺美奈さんは「被害者を国家間の和解の道具にしてはならない」、原告代理人の金世恩(キムセウン)弁護士は「経済制裁というとき、被害者に思いをはせてほしい」と当事者を置き去りにした政治動向に強く警鐘を鳴らした。

 被害者遺族が舞台に上がり、代表してノー!ハプサ(合祀)原告の李炳順(イビョンスン)さんが証言した。「父はニューギニアで戦死。母は姉と私を叔父に預けて露店で働き、私を大学まで行かせてくれた。妻と娘を思いながら遠い戦場で亡くなった父を思うと胸が張り裂けそうだ。父は『英霊』などではない。日本の侵略戦争に駆り出され、日本に殺されたのだ。創氏名で合祀され、今でも日本に支配されている。屈辱だ」と怒りをにじませる。

 韓国から多くの若者が参加し、午前中、日本の若者と交流の場を持った。韓国側参加者は「強制動員の過去と現在、徴用工問題について一緒に話し合ったことに大事な意味がある。平和のために進むのか、過去に逆行するのか。この時にみんなが力になれればいい」と語り、全員で「困難でも一緒に行こう」のダンスと歌を披露した。

 「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」に出展した『平和の少女像』制作者のキム・ソギョンさんが急きょ参加。「招待されたとき日本は自由が保たれていると思った。『写真はいいがSNSで流すのはだめ』と聞かされ、一抹の不安はあった。像の隣に座って手をとった日本人少女、ありがとうとお礼を言った年配の方―反響はよかったのに、平和のための像が河村たかし名古屋市長らによって歪曲され、非常に残念だ」と述べた。

 コンサート出演者のソン・ビョンフィさんは歌の合間に「芸術表現の自由を支持する韓国と日本の芸術家・活動家・文化芸術を愛する市民の共同声明書」を紹介。「過激な脅迫の行動に屈服することは、国際芸術行事を単なる官製行事に転落させ、芸術の自由を抑圧し、韓国と日本両国間の争いを助長するもの」と展示中止決定の撤回を求めた。

 終了後、靖国神社付近をキャンドルの灯をともしてデモ行進。来日の韓国市民と右翼のトラブルは国際問題に発展しかねないと警備陣が危惧したのか、例年と異なり右翼街宣車はデモコースに入れないよう規制され、少人数の右翼が交差点で日の丸を掲げてヘイトスピーチを絶叫するにとどまった。参加者は「靖国ノー」「安倍やめろ」と整然と行進した。

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