2019年09月06日 1590号

【消費税は廃止できる/法人税・所得税の累進性を高めよ】

 「景気拡大と捉える企業が昨年の78%から23%に激減」―共同通信社が8月に実施した主要企業112社アンケートの結果だ。「米中貿易摩擦は長引くとの見方が強いほか、10月の消費税増税への懸念も残り、企業が景気に慎重な姿勢を強めている」と言う。

 企業は消費税増税で景気後退は必至と見ている。ところが安倍政権は増税強行の姿勢を崩さない。これまでに行われてきた各種世論調査で消費税増税に50%以上が反対とする一方で、賛成も40%台と意外に高いことが安倍の強気を支えている。なぜなのか。

なぜ「仕方ない」?

 3月に公表された時事通信「生活に関する世論調査」によれば、58・5%の人が「生活にゆとりがない」と答えている。消費税増税で、「家計支出を見直す」人が57・2%。見直す先は6割近くが食費を挙げた。生活にゆとりがないから食費を削って消費税増税に対処するというのだ。

 食費まで削って増税を受け入れる人が少なくないことに驚く。増税賛成の理由に「社会保障充実と国の財政再建」の2つを挙げる人が多い。“社会保障が良くなるのなら増税も仕方がない。後の世代に借金を残さないため増税で財政再建”という政府の世論誘導が効いている。社会保障充実や財政再建の財源は消費税しかない、と思い込まされているのだ。



 逆にとらえれば、他に財源があることが納得できれば、消費税廃止の大きな流れができるということだ。

 増税派のだまし方を見る。

 財務省は、「なぜ所得税や法人税ではなく、消費税の引上げを行うのでしょうか?」との質問に次のような答えをホームページに載せている。(1)「社会保障財源のために所得税や法人税の引上げを行えば、一層現役世代に負担が集中する(中略)国民全体で広く負担する消費税が、高齢化社会における社会保障の財源にふさわしい」(2)「所得税や法人税の税収は不景気の時に減少してしまいますが、消費税は(中略)経済変動に左右されにくい安定した税」とする2点。(2)は税を取る側の論理なので今回は言及せず、(1)についての実態を確認する。

増税理由のウソ

 1990年度の税収は、所得税・法人税・消費税の3税で49兆円あり、2018年度では48・8兆円。ほぼ変わらない。内訳をみるとどうか。90年度と18年度を比べると、所得税は26兆円が19兆円で7兆円の減少、法人税は18・4兆円が12・2兆円で6・2兆円の減少。一方、消費税は4・6兆円が17・6兆円で13兆円増加している(図参照)。



 社会保障の充実を強調するのであれば、なぜ所得税と法人税を減税してきたのか。これに答えずして「社会保障充実」を消費税増税の理由にすることはできないはずだ。実態は、消費税増税分が所得税と法人税の減税分を補っているのであり、消費税増税は決して社会保障充実のための財源ではなかった。財界がさらなる消費税増税を唱えていることや軍事費の増額が続いていることを見れば、消費税増税分が社会保障に回ることは今後もありえない。

 財政再建に増税が必要とする言い分はどうか。90年度に7・1兆円だった公債金(国債+地方債)は18年度で33・7兆円に急増している。これは社会保障費増に対応するためでもあった。社会保障費は自然増が圧縮されてきたが、それでも最低限の制度維持のため、結局、財源を公債に依存してきたのだ。

 「後の世代に借金を残さない」という理屈は否定しにくい。だが、「公債依存」を作り出したのは所得税と法人税の減税にある。「借金」を生み出した原因を問わない理屈はウソでしかない。

 結論は、消費税増税の根拠はどこにもない。少なくとも消費税がなかった1988年に法人税、所得税の税率を戻すだけで消費税はなくすことができるのだ。

 だが、貧富の格差がますます開き、膨大な内部留保をため込んでいる実態を見れば、30年前の税率に戻すだけでは足りないのは明らか。所得税、法人税の累進制を高め、富の再分配を行うのが政治の常道ではないのか。
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