2019年09月13日 1591号

【ミリタリー・ウオッチング 思惑通り進まぬイラン攻撃 根本的対案―真の軍縮を】

首脳宣言なきG7

 8月24日から3日間、フランス南西部ビアリッツで開かれていた主要7か国首脳会議(G7サミット)は、初めて「首脳宣言」を採択できないまま閉幕となった。イラン問題では、イランに核保有を認めず地域の安定を求める方針では一致したものの、米国主導の「有志連合構想」をめぐる議論は何らなされていない。

 このサミットは1975年、主要6か国(アメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ、イタリア、日本)でスタートし、カナダが加わってG7に。1980年当時、世界のGDPに占めるG7のシェアは50・8%。これが2016年では30・9%にまで落ちこんでいる(IMF<国際通貨基金>資料)。トランプの「米国第一主義」ともあいまって、グローバル資本の応援団G7は、いま混乱と停滞の渦中にある。一直線に戦争で結束とはならない。

 2015年、イランと米英仏独露中の6か国との間で結んだ「核合意」を、米国は2018年5月に一方的に離脱。8月にはイランに対する制裁を再開し、今年5月、今度はイランが核合意に基づく一部義務の履行停止を表明するに至った。

 そもそもこのような核をめぐる緊張を生み出したのは明らかにトランプ政権である。オバマ前政権が署名した合意から一方的に離脱し、イランを不安定な状況に追いやった上、今度はそれを攻撃する。そして、このやり口に批判を持つ他の合意国を「有志連合」という枠組みに組み入れて、自らの軍事力を強化し、経済的負担は各国に押し付ける。

 そこに日本も加わろうとしている。今のところ、日本政府は明確な態度表明はしていないが、有志連合につながる動きを探っているのではないか。

未来につなぐ軍縮へ

 2018年5月、グテーレス国連事務総長はジュネーブ大学で軍縮アジェンダ『我々の共通の未来を保障する』を発表した。グテーレスは何よりも「軍備ではなく、軍縮による安全保障の必要性」を訴えている。

 「軍縮」ということばがメディアで語られることはほとんどない。日本社会で「軍縮」と言えば、せいぜい多少の軍事費の削減くらいとしか思われていない。だが、グテーレスも語るように、人類と命を守り、貧困をなくし、健康と教育を促進し、地球を保護する人間の安全保障≠ヘ、真の軍縮によってはじめて実現できるものである。私たちは、もっと包括的で未来につなげる力を持つ軍縮を目指す必要がある。

 「私たちは、危険な時代に生きている」。軍縮アジェンダの序文はこのことばで始まっている。「長引く紛争が人類に言語に絶する苦しみをもたらし、様々な武器を持つ武装グループがはびこっている。世界の軍事予算と軍備競争は拡大し続け、冷戦時代の緊張状態が、より複雑さを増した世界に再び出現している」

 もちろん、国連という組織と民衆の行動は同じではない。しかし今、人間の安全保障のためにこそ、根本的な対案としての軍縮が真摯に問われていることを私たちは胸にして闘っていきたいと思う。

平和と生活をむすぶ会
藤田 なぎ





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