2019年09月13日 1591号

【未来への責任(281)敗戦の日をソウルで迎えて(上)】

 8月14日にソウルで開かれる「強制動員問題の解決のための国際会議」で遺骨問題の報告を行うのと、昨年末に意見交換を行った行政安全部遺骸奉還課と再度会うために13日夜に韓国に向かった。

 8月15日の敗戦日にソウルにいることになるのは初めてだ。それも今年は安倍内閣による韓国ホワイト国排除と韓国側の特に市民の反発があり、どうなっているんだろうという思いがあった中での訪韓だった。アシアナ航空に乗ったが半分しか乗客がいないのにまず驚いた。いつもなら満席だが、「日本製品を買わない」「日本に行かない」という韓国市民の決意を目の当たりにした。金浦空港からは市内に入る地下鉄に乗る。地下鉄のホームには、15日のクァンファ門広場での強制動員問題の解決のための反安倍行動を呼びかける労働組合のポスターが貼ってあった。

 翌日の朝、遺骸奉還課を訪問した。この課は昨年末にできた課で、韓国での遺骨問題の盛り上がりを背景に作られた。スタッフは10人だそうだが、このような課ができたこと自体が私たちの取り組みの大きな成果ともいえる。課長と面談の後、実質事務を担う事務官と長い時間話すことができた。新しい部署ができて、さあ動き出すぞと思っていたそうだが、大法院判決以降日本政府の態度硬化により半休業状態になっている。

 重要なことが確認できた。1つ目は、2017年末176名の沖縄戦韓国人遺族のDNAを採取し日本厚労省に照合を申し入れたことを直接確認した。2つ目は、中部太平洋タラワ島の74体の遺骨を米国が主導し日・米・韓で共同鑑定していることも確認した。その結果は秋に出るということだ。3つ目に、今年の春に日本の韓国大使館が日本の外務省・厚労省を呼び出し外交ルートで遺骨問題などの実務協議を申し入れたこと、しかし8月現在返事がないということだ。厚労省は、外交ルートで韓国から話がない、という詭弁はもう使えない。

 14日午後からは国際会議に参加した。発言・報告者は17人。1人目の報告が終わったころ、会場は大混乱となった。ある遺族団体が「自分たちは国際会議の構成員に呼びかけられていない」などと騒ぎ、会議の妨害が組織的に始まった。主催者側は何度も注意をするが、長い間収拾がつかなかった。軍人軍属の問題をもっと取り上げるようにとも言っていたそうだ。日本から来た報告者たちは誰も驚いた様子ではない。これも激動の日韓情勢の中での現れの一つかと、私を含め皆納得しているようだ。

 さて、私は報告文章の5行程度の「はじめに」を、いちばん力を込めて書いた。「安倍内閣は植民地支配の被害者に対し彼らと遺族を冒とくし、加害者としての過去を忘れ、加害者としての歴史を消し去ろうとしている…」と。報告時間が少なく「はじめに」の部分は省略し遺骨問題を報告したが、『ハンギョレ』はこの「はじめに」の部分を私の報告として引用して報道した。私の怒りが8月15日の韓国市民の怒りと同じだったということだ。

(「戦没者遺骨を家族の元へ」連絡会 上田慶司)
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