2019年09月13日 1591号

【避難者の住宅と人権保障を/ひだんれんが対政府要請/家賃2倍請求、明け渡し訴訟やめよ】

 原発避難者の住宅強制退去問題で8月29日、ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)などが呼びかけて対政府要請が行われた。

 福島県は国家公務員宿舎に住む区域外避難者への使用料2倍請求を強行し、調停が不調に終わった5世帯に対し明け渡し訴訟を準備している。これについて「憲法25条の生存権を侵害する重大な人権侵害行為。国連人権理事会にも意見書を送った」と撤回を求めた。

 対応した復興庁は「福島県は相談会を設けたり訪問したり個別対応に努力している」「県は居住者の生活実態をつかみ、生活保護受給世帯など18世帯には4月以降の貸し付けを延長した」と評価し、県による人権侵害を見ない。「それ以外の、いまだ引っ越しのめどの立っていない方の実態把握はできているのか。把握できていないのに2倍請求したり追い出すのは精神的経済的に追いつめるもの」と追及すると、「他は(県も)つかめていない」と認めた。復興予算を福島県に支出する国は、県から事情聴取する立場にあるはずだ。

 2倍請求の法的根拠とされる使用契約書自体が、説明のないまま形式的に交わされていた実態も浮かび上がった。「日本語がほとんど話せない中国人居住者がいる。どうやってサインさせたのか。契約書の有効性が問われる。法的にも問題だ」との追及に、「(契約過程は)知らない」と、ここでも事情聴取すべき国の責任放棄が明らかに。明け渡し訴訟については「福島県の考え方を尊重しながら、生活支援は引き続きやっていきたい」と、人権侵害問題との指摘への返答は避けた。

 多くの居住者は低家賃の公的住宅入居を求め、それが実現しないため国家公務員宿舎に住み続けている。国土交通省は「7月、東京都に優先入居枠設定の検討を再度お願いした。60歳以下の単身者などは該当しないという世帯要件の緩和をお願いしている」と前向きな回答をした。

 明け渡し訴訟の対象者の一部は、家主である財務省に「行政財産一時使用許可申請書」を提出したが、受け取りを拒否された。「福島県にも提出したが、許可とも不許可とも回答してこない。国家公務員宿舎入居者は誰に訴えたらいいのか。そもそも居住者の申請権を奪うことにならないか」と、行政手続きを無視する国・県を追及。財務省は「申請書が出されたことを知らない。後で確かめてみる」とお粗末な対応だ。

 山崎誠衆院議員(立憲民主党)は「出られるはずなのに出ないから賠償金を請求するというなら、では、どこに行き場があるのか、一人ひとりに示してほしい」。行き場のない世帯の実態把握を国の責任として行うこと、経済的精神的に避難者を追いつめる2倍請求をやめるよう県に伝えること、1週間以内の文書回答を求め、今後も協議する旨を伝えて終了した。

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