2019年09月20日 1592号

【大阪市ひげ禁止裁判、控訴審も勝訴/維新市政による不当な職場支配とデマを許さず、一審判決を補強】

 9月6日、大阪市営地下鉄(現・大阪メトロ)の運転士河野英司さんら2人が、ひげを理由に人事評価を下げられたのは人格権を保障した憲法13条に違反するとして大阪市に慰謝料など計約450万円を求めた裁判の控訴審判決で、大阪高裁は一審・大阪地裁判決を維持し、大阪市側の控訴を棄却。運転士側の付帯控訴も棄却となったものの、維新市政の違法行為を再び断罪する勝利判決だ。

 ことの発端は、2012年に橋下徹元市長が5%の職員を必ず5段階の最下位とする相対評価制度を導入し、藤本昌信交通局長(当時)が「職員の身だしなみ基準」をつくったことにある。同時に、2年続けて最下位評価となった職員を「分限処分」にできるとする「大阪市職員基本条例」も制定されている。この基準に「違反した」との理由で、2人は13、14年度の人事考課で低評価を受け、運転士の1人は「分限免職」もあり得る状況に追い込まれていた。

 今年1月16日、大阪地裁は、ひげを剃ることを拒否したことで不当な人事評価を行ったたのは違法として計44万円の支払いを大阪市に命じたが、市は控訴。運転士側も付帯控訴し、「一審判決が憲法判断を回避したのは誤りだ」と主張してきた。

維新市政を断罪

 運転士側の代理人を務める村田浩治弁護士は、報告集会で次の2点を強調した。

 「ひげに関する服務規律は、個人の自由を前提にして業務遂行上の合理的な範囲で制約できるにすぎない、というのが高裁の判断の重要なところだ」。つまり、みだしなみ基準は、大阪市が「職員に理想を示し、任意のお願いを求める」その限りでの適法にすぎず、従わなかったことで評価が下げられたのは違法、と改めて断定したのだ。

 「また、吉村洋文前市長のツイートによる世間の誤解≠正すために、『(運転士は)ルール違反をしたものではない』との判断を、判決の最後に示している」。これは、一審判決後、吉村前市長が「適法な規則と言いながら、規則違反に対する処分が違法というのはおかしい」とツイートし、「市民の声」として「ルール違反をしていたのに、税金から慰謝料を支払うのはおかしい」との攻撃があったことを意識し、裁判所が明記したものだ。

 裁判所も、維新の首長が頻繁に行うデマ発信を防止しようとした恰好だ。

勝利踏まえ職場を変える

 高裁判決をうけ、支援者から「郵政での同種裁判も勝利したが、忖度(そんたく)社会である日本の現状から、今後の職場の闘いが重要」などの意見も出された。当事者らは、勝利をかみしめ今後の闘いへの決意を述べている。

 河野英司さんは「付帯控訴して、一番認めてほしかったのが『身だしなみ基準』の違法性で、それが認められなかったのは残念ですが、『基準』は個人の任意の協力を求める趣旨のものでなければならないと裁判所が認め、加えて、ひげを生やしていることがルール違反にはあたらないと書いてくれた。率直に言ってうれしい。大阪市と大阪メトロは、真摯に受けとめて上告しないでほしい」。

 もう一人の運転士は「私たちは、おかしいことをおかしいと言っただけ。大阪メトロは、風通しのよい職場づくりをすると言うが、現場ではまだまだそんなことはありません。しかし、これからもがんばっていきたい」と語る。

 職員思想調査や「入れ墨」調査など不当な人権侵害を続けてきた橋下、吉村、松井と続く維新市政に、当然の司法判断が行われたのだ。

 2人が所属する大阪メトロユニオン(なかまユニオン・大阪メトロ支部)や「裁判を支援する会」は、大阪市と大阪メトロに対して非を認めてこの判決に従い上告しないように要請するとともに、引き続き相対評価の廃止を求めて闘っていく決意だ。



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