2019年09月27日 1593号

【未来への責任(282)敗戦の日をソウルで迎えて(下)】

 私は韓国での「強制動員問題の解決のための国際会議」で、遺骨問題を強制動員問題の大きな課題に押し上げよう、遺骨問題で私たちは今年10月に第5回厚労省交渉を構えていると報告した。

 17人の発言者のうち、チェ・ナックンさんは5月に家族を連れて訪日し、お父さんの動員地である貝島炭鉱跡(福岡県)を私たちと訪問した思いを発言した。沖縄からは沖本富貴子さんが、本部町の韓国人遺骨と日本人遺骨が埋葬された場所を発掘し韓国に奉還したいと沖縄で会を作ったことを報告した。沖縄では朝鮮人遺骨問題が県民のDNA鑑定とともに解決すべき課題として大きく報道されてきている。

 この日14日は「慰安婦」問題の集会も屋外で大々的に行われていた。

 いよいよ8月15日当日を迎えた。解放74周年強制動員問題解決のための市民大会と行進がソウル市役所前広場で開催された。台風の影響の雨の中2000人が集まり、日本大使館まで行進した。イ・ヒジャさんが集会で檄をとばす。日鉄裁判の原告、不二越裁判の原告も参加し雨の中デモの先頭に立つ。強制動員問題での大規模なデモは初めてだそうだ。民主労総が動員をかけている。「安倍内閣を糾弾する」「強制動員を謝罪しろ」「歴史の主人公は私たちだ」―コールは続く。すごく感動する。どうしてこれが反日デモと日本で宣伝されるのか? 昼から夕方にかけていろいろな団体が雨の中、強制動員問題の屋外集会を繰り広げていた。

 夕方になると、反安倍の大集会がカンファ門広場で始まった。会場に向かう途中ではムン・ジェイン退陣の集会も組織されていて混とんとしていた。そこは、高齢者ばかりの印象だった。

 しかし、反安倍の大集会は若い人や子連れ、中高生などが集まり、どんどん膨れ上がる。安倍政権を批判する歌や音楽が披露される。雨も上がり、みんな楽しそうで元気だ。いっときの「NO!JAPAN」のスローガンはなくなり、「NO安倍」一色になっている。主催者発表は10万人、テレビでは3万人とも数万人とも言っている。多すぎてよくわからない。市民が不買運動に自発的に参加しているので、集会参加だけが市民の抗議の意思表示ではないというが、それでもここの現場はすごい。

 夜、テレビでは韓国の独立運動の女性闘士ユ・グァンスンのテレビドラマをやっていた。監獄で日本の警察に痛めつけられている。一方日本では、植民地支配で日本が何をしてきたか、何年の間韓国を植民地にしたかさえ知らないし考えない日本人が教育やテレビやインターネットでつくられてきている。

 2019年8月15日私は韓国のデモの中にいた。日本による植民地支配の被害者を韓国社会が守るという大きな歴史の一歩が築かれた瞬間だった。加害者が被害者のようにふるまう日本の現実に、韓国人軍人軍属の遺骨問題という事実を沖縄から本土に広げていくことが求められている。まずは10月の第5回厚労省交渉に全力を上げる。沖縄戦の176名の韓国人遺族のDNA鑑定データと遺骨との照合受け入れを認めさせなければならない。

(「戦没者遺骨を家族の元へ」連絡会 上田慶司)

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